「千羽鶴はいらない」「タオルはもう十分ある」

 まず「千羽鶴はいらない!!!」と言っていた。一人からなら千羽、2人からなら二千、全国各地から何万羽の鶴がここに来る。どこにこの鶴を置いたらいいんだ。捨てられないし、置いとけないし、ありがたいけど大変なときにめちゃくちゃ仕事が増えるから、まじで勘弁してほしいと。

 あと外国で買った薬。これは怖くて飲めない。外国で買ったレトルト食品もだ。アレルギーがある人は、成分表示を見てもどれがアレルギーかわからない。

 あとはたくさんのタオル。タオルは足りすぎていて、トラックから下ろすだけで丸一日が過ぎる。古着の下着もいらない。穿きたくない。アフリカとかとは違い、昨日まで新しいものを着ていたからだ。

 いらなくなった家電なんてもっといらない。ブラウン管のものとか、捨てるのに金がかかるから送ってくるやつもいる。ほかにも、結婚式でもらった引き出物の皿。知らない新郎新婦の写真が貼られた皿だ。被災地が一番大変なときに、人の幸せな写真を見ながら飯を食うのは拷問だ。

 あと、お守り……もう手遅れだ。

 謎の部族のお面みたいなものが入っていたこともあったという。彼らは言った。「これ、どこで被ればいいんですか? マスコミが来たときに顔を映されたくないときに被ればいいんですか?」と。

 僕が、彼らからもらった最高の言葉を読者のみなさんへ心の救援物資として捧げましょう。

「そっちでいらないものは、こっちでもいらない!!」

 それを聞いたとき「その通り」と思った。何でもかんでも送ることによって、実は相手に負担を強いていることもある。

(本原稿は、村本大輔著『おれは無関心なあなたを傷つけたい』からの抜粋です)