アクティブ・リスニングの効果的な評価方法とは?

――自分がきちんとアクティブ・リスニングができているかは、どうチェックすればいいでしょうか?

篠田:自分自身の感覚を信じることと、周りの反応のよしあしに尽きると思います。コミュニケーションを通じて自分と相手の関係性が深まっている感覚をつかんだら、アクティブ・リスニング上達の証と考えていいと思います。

リモート環境で人間関係を維持するためのテクニックとは?【「星友啓×篠田真貴子」対談後編】篠田 真貴子(しのだ・まきこ)
エール株式会社 取締役/株式会社メルカリ 社外取締役 UWC ISAK ジャパン評議員/NPO法人かものはしプロジェクト理事
慶應義塾大学経済学部卒業。ペンシルバニア大学でMBA取得。日本長期信用銀行(現新生銀行)、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ノバルティスファーマ、ネスレニュートリションを経て、2008年、ほぼ日に入社し、取締役CFOを務める。2020年より現職。『アライアンス』(リード・ホフマンほか著、ダイヤモンド社、2015年)の監訳、『仕事と家庭は両立できない?:「女性が輝く社会」のウソとホント』(アン=マリー・スローター著、NTT出版、2017年)の解説ほか、ウェブサイトで洋書紹介など、幅広く活躍している。

:アクティブ・リスニングの評価は、様々な基準で判断できます。親しい人と話す際に目標を定め、話し終わった後にフィードバックをもらったり、上級者ならば相手に目標を伝えずにアクティブ・リスニングをして、後でセルフアセスメントしたりするのもいいですね。セルフアセスメントやフィードバックなどの手法を使いながら、自分と他者の評価を取り込んでいくのがいいでしょう。

 初心者は自分でカメラに向かってアクティブ・リスニングの練習の様子を録っておいて、後からセルフアセスメントするのも1つの方法ですね。

オンラインチャットでもアクティブ・リスニングの姿勢が大事

――リアルな場でのやり取りとオンラインチャットでのやり取りに違いはありますか? 

:オンラインハイスクールではこれまで、テキストチャットは必ず使うようにと伝えてきました。オンラインの会話では話し手の交代などで対面の会話にはないタイムラグが生じるので、普段通りに会話に入っていくのが難しい場面もあります。一方で、テキストチャットだと話している間に質問できるので、迅速で有機的なやり取りが可能になるからです。

 最初は難しいかもしれませんが、オンライン環境に慣れてくるといままさに発話されている言葉と画面上のテキストチャットが頭のなかで融合し始めて有機性を持ち始める段階があって、それがオンラインコミュニケーションでは非常に重要だと思っています。音声のみのオンライン会話だと対面と比べて非有機的ですが、そういうギクシャクとした部分をテキストチャットが埋めてくれる可能性があると考えています。

リモート環境で人間関係を維持するためのテクニックとは?【「星友啓×篠田真貴子」対談後編】星 友啓(ほし・ともひろ)
スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長 経営者、教育者、論理学者
1977年生まれ。スタンフォード大学哲学博士。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。教育テクノロジーとオンライン教育の世界的リーダーとして活躍。コロナ禍でリモート化が急務の世界の教育界で、のべ50ヵ国・2万人以上の教育者を支援。スタンフォード大学のリーダーの一員として、同大学のオンライン化も牽引した。スタンフォード大学哲学部で博士号取得後、講師を経て同大学内にオンラインハイスクールを立ち上げるプロジェクトに参加。オンラインにもかかわらず、同校を近年全米トップ10の常連に、2020年には全米の大学進学校1位にまで押し上げる。世界30ヵ国、全米48州から900人の天才児たちを集め、世界屈指の大学から選りすぐりの学術・教育のエキスパートが100人体制でサポート。設立15年目。反転授業を取り入れ、世界トップのクオリティ教育を実現させたことで、アメリカのみならず世界の教育界で大きな注目を集める。『スタンフォード式生き抜く力』が初の著書。
【著者公式サイト】(最新情報やブログを配信中) https://tomohirohoshi.com/

篠田:チャットツールのみのコミュニケーションだと、こちらから何か呼びかけたり質問したりして、しばらく返事がないと不安になりますよね。逆に「後で返事します」とか「ちょっと待ってください」と一言が返ってくるだけで、少なくとも話が向こうに伝わったと思えます。

 チャットでもアクティブ・リスニングの態度で聞いてもらえたら、ちょっと安心するということですね。スタンプ一個でもいいので、その態度をまず見えるようにしておくというのがポイントではないでしょうか。

相手にアドバイスするならまず「聴く」ことから始めよう

――人の話を聞くときに、アドバイスすべき場面と「聴く」場面を使い分ける方法はありますか?

篠田:アドバイスの時間と聴く時間を明確に区切るのは不自然です。指示を出すべき場面があったとしても、初めの5分はまずアクティブ・リスニングをして、部下にどう指示を出したらいいかをプランニングする。そして、そのプランに応じてこちらから指示を出した後は、相手の受け止め方を確認するために再びアクティブ・リスニングに戻る、というように進めていくのが自然ではないでしょうか。

:同感ですね。カール・ロジャースも「何か伝えたいならまず聴け」と言っていました。こちらが聞き手のロールモデルを提示することで相手の心がオープンになり、次に相手が聴いてくれやすくなる、という心理学的エビデンスもあります。ですので、アドバイスや指示を与えたいときはまず聴くことから始めましょう。