麻疹の場合はR0=12~18とされている。つまり1人から12~18人に感染させてしまう。新型コロナについては未解明だが、季節性インフルエンザではR0=0.9~2.1だから、その感染力がお分かりいただけると思う。

 しかも、はしかは空気感染する。病原体を含む小さな粒子(5ミクロン以下の飛沫核)が空気中を漂い、これを吸い込むことで感染が起こる。米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、患者に近づいた人の感染リスクは90%に達するという。また、『医療機関での麻疹対応ガイドライン』第7版(厚生労働省、2018年)には、はしかの免疫のない人が医療機関の待合室で、患者と20分弱居合わせただけで感染・発症したケースが示されている。

 そのため、はしかの患者を診察するには、特別な換気装置とフィルターを備えた陰圧室が必要となる。そのような施設は市中の診療所にはなかなか用意ができないし、そこに至るまでの動線を分けるのも困難だ。

 当然、接触感染もある。感染者が唾液や鼻水などの付いた手で触った物、手すりやドアノブなどに触れ、その自分の手で顔などを触ることで感染する。英国国民保健サービス(NHS)は、はしかのウイルスは物の表面で2~3時間は感染力を有するとしている。

 さらには新型コロナウイルス同様、症状が出る前でも人にうつる。はしかの潜伏期間は10~12日(最大21日)とされており、風邪のような初期症状が出現する1日前から(発疹出現の3~5日前から出現後4~5日程度まで)人に感染させうる。その間に受診したり、人と接したり、公共交通機関を使ったりして、ウイルスを拡散させてしまう恐れは大きい。

感染後9割が発症
症状の出方はトリッキー

 はしかのウイルスが粘膜に付着した場合、免疫が十分でなければ感染が起き、感染すれば9割が発症する。免疫がない、もしくは大幅に減弱している人だと、新型コロナのように無症状感染や軽い風邪程度で済むといったことは、まずない。

 症状の出方も、なかなか「あまのじゃく」だ。

 最初に38度前後の発熱と倦怠(けんたい)感、咳(せき)やのどの痛み、鼻水といった風邪のような症状が2~4日間続く。目の充血や腹痛、下痢などが見られることもある。この時点で、風邪や新型コロナ、インフルエンザではと考える人もいるだろう。

 この終盤、口の中の粘膜は真っ赤に充血し、その中に白くぽつぽつと斑点(コプリック斑)が現れるのも特徴的だ。医師ならこの時点で、はしかに気づくことは多い。ただしそのときには、目の前の患者さんが既に周囲の人たちに感染させている可能性も高い。

 その後、熱は37度ぐらいまでいったん下がる。それまで受診せずに様子を見ていた人は、「ああ、やっぱり風邪かな」と思うものだ。