野党は安全保障政策について米国と十分な議論ができるのか。また、来年10月までに総選挙が行われるが、政権交代を目指す立憲民主党は、旧国民民主党との合流を経ても支持率が伸び悩む。共産党との連携はどこまで可能なのか。枝野幸男代表に聞いた。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
トランプ大統領は“セールスマン”だった
バイデン政権で日本への要請「性質が変わる」
――米国では21年1月に大統領が変わります。米中の対立が続く中、日本の外交はどうあるべきだと考えますか。
日本政府を誰がマネジメントするにせよ、日米同盟を基軸とした信頼関係で国益と平和を確保していくことに変わりはありません。
米中関係は、米国のバイデン次期大統領の就任で大きく変わるとみてはいけないと考えています。中国の軍事的な膨張に対する米国の牽制は続く。香港、チベットの人権問題に対しても厳しく対処するでしょう。
またバイデン政権は、単独主義よりも欧州を含めた国際的な連携を強めて中国への抑止政策を採るでしょう。そうした枠組みの中で、日本に対する一定のニーズはある。それが強まるというよりも、従来と性質が変わるのではないかと受け止めています。
私は、トランプ大統領は極東の軍事的な戦略に基づいて行動するというよりも、日米同盟を大義名分にして軍需産業の“セールスマン”をやっていたのだと思っています。こうした姿勢はどの政権でも一定程度残るでしょうが、バイデン政権ではより法の秩序、人権、民主主義などを重視するという面で、日本にオファーが来るのではないかと考えます。
問題は安保法制より解釈変更の閣議決定
米国との信頼構築は「心配していない」
――2015年に成立した安全保障法制(安保法制、武力攻撃事態法や国際平和支援法など)について、立憲民主党は今でも憲法違反だという考えですか。
一部は違憲だと考えています。「集団的自衛権の行使を認めた」と政府が説明した点が憲法違反です。安保法制によって日本が可能になったことや想定されるシチュエーションは全部、個別的自衛権で説明できます。
むしろ、国会での法案成立の前に、政府が現憲法下でも集団的自衛権を行使できると閣議決定したことが問題なんです。
――もし立憲民主党を中心とした政権が発足した場合、集団的自衛権を行使できるとした閣議決定を見直すのですか。
法律を変えずに、憲法の解釈を従来通りに戻すという閣議決定をすれば、それで99%是正される。法律の読み方として、違憲と読める文言を改める必要はありますが。そのことによって、日本ができると言ってきたことができなくなるとか、日米同盟を害することは、基本的には想定されないと思います。
――安保法制は米国がオバマ政権の時に成立し、米国は歓迎していました。バイデン氏はオバマ政権の副大統領で、バイデン政権はトランプ政権よりもオバマ政権に近いスタンスになると思いますが、ただいまの枝野さんの説明で納得するでしょうか?
日本の憲法の解釈に関することですから、米国が日本に対して、集団的自衛権の行使を求めることはあり得ない。現憲法下で米国が日本の自衛隊に何をしてもらいたいのか、具体的なニーズの面で問題は生じないと考えています。逆に、例えば中東で自衛権行使に当たらない先制攻撃を米国と一緒に行うことは、今の安保法制でもできませんから。
――民主党の鳩山由紀夫政権時に米国との関係が悪化したことから、立憲民主党が米国と、安全保障を含む十分な議論ができるのか、有権者の間には不安があると思います。
私は心配していません。昨日、親交のある米民主党の下院議員とオンラインで会談しました。いろいろなところでわれわれの考えを説明していますし、いわゆる“ジャパンハンドラー(日本の外交や安全保障政策に影響力を行使しているとされる米国政府に近い関係者)”以外の人たちは、「ああそういうことか」と大体理解してくれます。