集中治療専門医は全国で493施設に在籍しているので、このうち約1割の施設が都内にあるということになる。

 この数字だけ見ると、都内に新型コロナ重症患者の受け入れ施設が集中しており、医療体制は万全のように見えるが、ある数字に着目すると、必ずしもそうとは言えない状況が浮かび上がってくる。

 図表の中にある「集中治療専門医数」に注目すると、「1」という数字が目立つ。その数は15施設であり、割合としては37%。つまり、都内の集中治療専門医がいる病院の4割弱は、「専門医1人の単独体制」なのである。

 ICUは、がん、心臓外科、脳外科などの術後管理や心不全、脳卒中、敗血症などの集中治療に用いられ、それぞれ主治医が治療に対応することが多い。その場合、「集中治療専門医が1人体制」でも大きな問題が発生することはないかもしれない。

 しかし、新型コロナのような感染症の場合、仮にECMO(体外式膜型人工肺)が必要な重症患者が運び込まれてきた場合、24時間365日、ECMOを扱える医師が必ずベッドサイドに1人は必要になる。コロナ重症患者を受け入れる病院にとって、たった1人の集中治療専門医では、十分な受け入れ体制とは言い難い。不測の緊急事態に備え、少なくとも2人以上の集中治療専門医の配置は必要だろう。

世界で「外れ値」ともいえる
日本特有の医療提供体制

 なぜ、人口密集地域である東京都においても、「専門医1人体制」のような医療機関が散見されるのか――。

 再び視点を国際比較に移すと、その要因が見えてくる。

 人口1000人当たり病床数が、OECD加盟国でトップであることは冒頭で述べた通りだ。これと同じく人口1000人当たり医師数(日本2.5人、米国2.6人)や看護師数(日本11.8人、米国11.9人)を重ねて分析していくと、世界で「外れ値」ともいえる日本の医療提供体制の実態が見えてくる。

 人口1000人当たり病床数と医師数を照らし合わせ、日本の「一病床当たり医師数」を割り出すと、OECD加盟国で最低の0.2人。米国が0.9人なので、その差は4倍以上となる。

「一病床当たり看護師数」も同様で、日本が0.9人なのに対し、米国は4.1人。医師と同じく4倍以上の差がある。

 医師数も看護師数も「人口1000人当たり」で見ると米国と大差がないにもかかわらず、一病床当たりの数字で見るとこれだけ大きな差が生じてしまうのは、日本が世界で「外れ値」といえるほど病床が過剰に存在することに他ならない。