ここで、豊田章男社長の猛烈なアピールの意味がわかってきます。日本でこれまで共通認識とされてきた「ハイブリッド車はガソリン車ではない」という決定を、世界基準に合わせずにこのまま変えないでほしい、という意味なのです。

 一方で、トランプ大統領の選挙敗退で世界の潮目が変わったことを、一番理解しているのが官邸です。これまで傘になってくれていたアメリカが脱炭素に動けば、日本も追随せざるを得ない。そのため、「軽自動車も電動化目標に含まれる」という方針を、自動車工業会に対する返答の中で、急遽はっきりと打ち出しました。

 つまり、後先を考えるのはこれからで、自動車メーカーにはまずは技術革新に伴う再編が起きる未来を覚悟してほしい、と言っているわけです。いずれ世界全体は電気自動車が主流になる。そうなれば、自然と電池の価格も下がるし性能も上がる。2035年までには実は電気自動車の方が高性能で安くなる可能性が高くなるだろう、という読みがあります。

自動車の勢力図が塗り替わる?
国家が真に踏み込むべきこと

 とはいえ、エンジン性能で差が出せなくなると、メーカー間の競争障壁が消滅します。テレビメーカーの序列がブラウン管時代と液晶時代でがらりと変わったように、自動車メーカーの顔触れが世界的に変わる競争が起きる可能性があります。

 今、テレビの世界市場シェアはサムスン、LG電子(以上韓国)、TCL、ハイセンス(以上中国)、ソニーがトップ5となっています。自動車業界も、世界レベルでこれと同じ再編が起きることが懸念されています。

 雇用と産業に責任を持つトヨタが、ハイブリッド車をテコにして世界の流れに竿を指す意図はわからないでもないですが、一方で世界の流れは、人類存続の願いに基づいた巨大な流れでもあります。むしろ豊田章男社長が指摘したもう1つの主張、つまり国家がエネルギー政策の大変革に踏み込んで対応すべき問題だ、という点の方が重要です。

 企業のトップは生き残りを、国のトップは脱炭素化の道筋をそれぞれ追いかけることに専念できる、2021年がそのような転換点の年になってくれたらいいと私は思います。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)