航空・鉄道 最終シナリオ#6Photo:Diamond

全国の自治体が続々とANA、日本航空(JAL)からの出向者受け入れを表明している。手を差し伸べる美談の裏には「下心」も見え隠れする。受け入れ自治体は旅客数が激減した空港所在地に多いのだ。特集『航空・鉄道 最終シナリオ』(全18回)の#6では、全国の空港を対象に、緊急事態宣言が出された2020年4月以降の旅客数による「廃港危険度ランキング」から、経営が厳しい空港をあぶり出した。(ダイヤモンド編集部 清水理裕、土本匡孝)

ANAしか飛ばない島根の石見空港は
ANAに出向受け入れを申し出た

 2020年11月11日、島根県益田市の山本浩章市長は都内にあるANA本社を訪れ、ANA幹部と対座した。会談は年中行事だが、今回に限ってはその内容が大きく異なった。

 例年は、島根県、山口県の市長や町長らと共に「萩・石見空港利用拡大促進協議会」の会長として、益田市にある石見空港(愛称は萩・石見空港)と東京、大阪を結ぶ路線の利便性向上を、ひたすら「要望」していた。

 石見空港に就航する航空会社はANAのみ(羽田便1日2往復、伊丹便夏季のみ1日1往復)。新型コロナウイルス感染拡大の影響で同空港は閑古鳥が鳴いた。20年4~10月の総旅客数は対前年同期比86.6%減のわずか1万2366人で、全国の空港の中でも増減率ワースト10に入る。(次ページの全国84空港「廃港危険度」ランキング参照)。

 20年の会談の肝は「要望」ではなく「提案」だった。コロナ禍の影響で大赤字に陥っているANAが社員のグループ外出向を表明していたことから、協議会として受け入れを申し出た。その狙いを山本市長は「ANA社員と共に羽田便2往復運航の永続的な航空需要をつくり出す」と言うが、裏を返せばこの先ANAが経営難と旅客数減を理由に路線リストラしないよう先手を打ったのであろう。

 こうした行動に出たのは石見空港陣営だけではない。全国各地の自治体が、ANAや日本航空(JAL)からの出向受け入れに手を挙げた(次ページ「ANA、JAL社員の受け入れ先として名前が挙がる自治体」参照)。

 旅客数が激減した空港がある地方の自治体は、とりわけ積極的だった。