健康な心の維持に不可欠なのは、
「5つのペルソナを持つ」こと
大塚:僕の新刊では、結婚生活をどうマネジメントしていくかについてのノウハウを紹介しています。要は夫婦関係も技術で修復できるんじゃないか、と。つまり、植木さんのおっしゃるソフトインテリジェンスをどう上手に使っていくかということと同じだと思うんですが、ソフトインテリって、そもそも誰にでも備わっているものなんでしょうか?
植木:ハードインテリとソフトインテリは脳の機能の中では違う部分を使うので、基本的には誰しもが両方の力を持っていると言われています。でも抽象度の高いビジネスの場で長い時間を過ごし、ハードインテリジェンス優位になりすぎていると、このソフトインテリの部分がだんだん弱くなってくる可能性が高い。
大塚:やはり、そうなんですね。
植木:ただ、たとえば実家に帰って両親と話しているときって、戦闘的でハードな気持ちにはなれないですよね。会話に厳密さを求める必要もない。誰でも自然とソフトインテリジェンス優位になっているはずです。つまり、切り替わっているんですね。これを結婚生活でもできるようになれるといいのですが。
大塚:分かりやすい話ですね。ところで、その切り替えは意識すればできるようになるんですか?
植木:そう思います。しかもそのための努力は、個人のメンタルヘルスのためにも、すごく重要なんです。というのも、あるデータによると、心の健康を損ないやすい職業の1位は教師で、2位が専業主婦、3位が宗教家、日本で言うところのお坊さんだそう。
彼らに共通するのって、キャラクターを1つしか持ちにくい職業だということです。先生はずっと先生っぽくいなければいけないし、お坊さんもそれらしくいなければいけない。専業主婦も仕事内容としては365日変化がありませんよね。
大塚:えー、IT技術者じゃないんだ。でも教師というのも、言われてみると納得しちゃいますね。要はキャラが問題なんですね。
植木:キャラクター、これを心理学ではペルソナと呼びますが、つまり1人の人間が5つぐらいのペルソナを持つことが、心の健康を保つ秘訣なんです。ソフトインテリ、ハードインテリというのはざっくりと分けて2つですけれど、最低でもその2つは持たないといけない。もっと余裕があれば、どんなペルソナでもいいから、できれば5つ持つ努力をすることが大事ですね。
ちょっと話が逸れますが、カウンセリングに訪れた方たちにいろいろなアンケートをとるなかで、睡眠時間や体重の増減とかの質問に混ぜて年収も聞いてみたことがあるんです。どれくらいの年収の人が心を病みやすいのかな、と疑問に思って。
大塚:それは興味深いですね。どんな結果が出たのですか?
植木:私が勝手に調べただけのデータなので恐縮ですが、結果は年収200万円以下と3000万円以上で綺麗に2つの山になっていて。200万円以下の人の具合が悪いのは何となく理解できる気がしますよね。いろいろと不安も多いでしょうから。
一方、3000万円以上の年収がコンスタントにある人というのは超セレブリティですよね。どうしてどんな方が具合を悪くするんだろう、とご本人たちに話を聞いてみると、どうやら彼らは「セレブ」という1枚の仮面を着けている気持ちらしいんです。「この仮面がなくなったらどうしよう」という恐怖といつも戦っている、と。
大塚:それは絶対に手放したくないと思うほど素敵な仮面なんですね。
植木:ええ、でも、いくらいいものであっても1個しかないと、本人も家族もいつか破綻してしまう。逆に1つ1つは大したことないものでも、5つのペルソナがある人のほうが元気なのが現実なんです。(後編に続く)
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