仕事と家庭で使い分ける、
ハードインテリとソフトインテリ
植木:男性はもともとハードインテリジェンスを女性よりも強く持ち、女性は元来ソフトインテリジェンスを強く持つと考えられています。
昔の日本では外で仕事をするのは男性で、家を守るのは女性と棲み分けられていましたから、それぞれの役割をまっとうするだけでそれほど問題は起こらなかったのかもしれません。
でも私もそうですが、女性でも仕事を持っていて、なおかつ家庭内にもハードインテリを持ち込んでやり合ってしまう人が今は多くなっている。これでは家庭の雰囲気が悪くなってもしかたがない。
本当は男女ともに、外ではハードインテリジェンス、家ではソフトインテリジェンスって切り替えられると仕事も家庭も上手くいくんでしょうが、なかなかそうはできませんよね。
大塚:すごい、なんて分かりやすいんだ。その3つのソフトインテリジェンスって、僕の新刊『結婚を後悔しない50のリスト』でも紹介した、結婚が上手くいく人が兼ね備える要素と非常に重なるような気がします。例えば、言ってはいけないNGワードってあるじゃないですか。夫が奥さんに向けて言う、「結論から言ってくれる?」というひと言とか。
植木:ああ、確かにそれを言われると腹が立ちますね(笑)。
大塚:そうでしょう。家に一日いた奥さんの方はただ話を聞いて欲しくて、仕事から帰ってきた旦那さんに玄関口から食卓までずっとマシンガントークでまくしたててしまう。でも旦那さんの方は疲れてくたくたなのに、なんでそんなに要領の得ない話をするかな、とイライラしてくるんです。
だからついつい、「結論から言ってくれる?」とか「今ちょっと疲れているからやめてくれない?」とか言っちゃうんですよね。それに奥さんはカチンとくる。それが不仲に発展する原因にもなるんですが、そこで賢い夫は「後でゆっくり聞くから」と言うそうなんです。
植木:まさにソフトインテリジェンスの「先送りする力」ですね。それがあれば、「後でゆっくり聞くね」って言えるんです。
さらに心理学的に分析すると、「結論から言ってくれる?」という言葉の裏にあるものって、「普通は結論から話すよね」っていうメッセージでもある。でも、その「普通はこうだよね」っていう言葉って、そもそも夫婦間ではお互い腹が立つだけのもの。常識とか普通っていう、世の中の正義を夫婦喧嘩でぶつけ合っても何の解決にもならないじゃないですか。そういう言葉は、家庭内ではやっぱりNGです。
大塚:なるほど。じゃあ代わりにどんな言い方が家庭内でふさわしいんですか?
植木:「僕はこう思うんだけど、君はどう思う?」というふうに、主語を「僕」と「あなた」にして話すんです。これは親子間の会話にも当てはまるのですが、「お母さんはそういうふうにすると寂しいわ」とか「お母さんはそういうふうにしてくれて嬉しい」という言い方を母親がする家には、不登校や問題行動のあるお子さんが少ないと言われています。やっぱり、一般則や常識を持ち出す言い方は家庭には合わないんですね。