米Microsoft(マイクロソフト)は、次世代の検索サービスおよびそのブランド「Bing」(日本語読み:ビング)を発表、6月3日より全世界で提供を開始した。
「Bing」は、昨年より「Kumo」(日本語の雲、蜘蛛に由来)のコードネームで開発されていたもので、「Live Search」の後継となる次世代検索サービスとなる。
日本語版で「マイクロソフト」を検索。左側に「サポート」「アップデート」などのカテゴリーが表示される。 |
オンライン検索市場において、マイクロソフトは、シェア第3位。グーグル、ヤフーの2社に大きく離されており、厳しい戦いを強いられている。新検索エンジンの開発は、この状況を打開する唯一無二の切り札として、多額の開発費なども大きな話題となっていた。
では、いよいよお目見えした「Bing」、どんなものなのか。マイクロソフトでは、同エンジンを、「decision engine(意思決定エンジン)」と位置づけている。すなわち、単に検索機能を進化させたのではなく、「検索後」に着目したエンジンであると考えればいいだろう。
具体的には、今までの検索エンジンは、原則的に検索語との関連性の順に検索結果が並んでいたが、「Bing」では、検索語ごとに推測されるユーザーの意図別に検索結果を分類して表示される。たとえば、ある企業名を入力して検索したとすると、「Product(商品)」「Online Services」といったカテゴリーが、検索ページ左に表示される。ユーザーは、自身の意図に沿ったカテゴリー、たとえば、「Job」をクリックすると、その企業の求人に関連するサイトのみが表示されるというわけだ
また、ユーザーの検索行為のリサーチから、「オンライン上で商品を購入する」「旅行を手配する」「健康に関わる情報を参照する」「地域の会社や店舗に関する情報を調べる」という4つの領域に着目、購買やサービス選択といった際の意思決定に役立つ情報を選別して提供する。さらに、パートナー企業との連携による同エンジンから商品を購入したり、チケットなどを手配したりすれば、割引などが受けられるサービスもある。
マイクロソフトがオンライン市場での巻き返しを賭けて投入した「Bing」は、果たしてグーグル追撃の切り札となるのであろうか。この点については、米国の調査会社、識者の評価は概ね厳しく、「現状を劇的に変えるとは言えない」という意見が多いようだ。
マイクロソフト自体の戦略としても、スティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)の「当社のシェアを大幅に伸ばすには、すべての人の興味をかきたてる必要はないが、一部を魅了しなければならない」という言葉からも窺えるように、多数派を一気に鞍替えさせる、というようなものではなく、ファン層をじわじわと拡大し、そのニーズによって、さらなる進化を図る、といったものだと推察される。いわば、「Bing」のリリースは、“最終兵器の投入”ではなく、“宣戦布告”といったところだろう。
もうひとつ気になるのが、日本語版。北米版のサービス開始にあわせて、日本語版も「bing.jp」にてベータ版として提供された。検索した場合、左側にカテゴリーは表示されるが、機能的には、当面は、「Live Search」と同じ機能のみでの提供。新機能は随時追加の予定で、正式版への移行の時期も未定だ。北米版のパートナー企業と連携した機能も、日本版での実装は未定。その代わり、といっては何だが、日本独自の機能を追加する計画である。
多少不満が残るところだが、考えてみると、同エンジンが、「検索後」のユーザーの行動・嗜好に着目したエンジンである以上、その行動・嗜好は、地域によって大きく異なる。日本で暮らす我々にとっては、「日本オリジナル」に期待すべきだとも言えるだろう。
(梅村 千恵)