最短で学力をつけるために、おすすめは読書

借金玉 さっきの「幕の内弁当」の話ですけど、北海道の大学を中退した後、バーで仕事をしていたときに、遊びで「日本列島クイズ」みたいなことをさせられたことがあるんです。都道府県の形を見て、それが何県か当てるというクイズです。

でも、僕は小・中学校はほとんど行ってなかったので、北海道以外一つもわからなかった。義務教育をすっ飛ばすと、こういう「積み上げ型の知識」が全く身につかないんですよ。

加藤 なるほど……何かに秀でることももちろん大事ですけど、バランスよく学んでおくのも、同じように大事ってことですよね。

借金玉 まさに、そうなんです。そういう「どこかが決定的に欠けてしまう」というのが少ないのが、学校の学びのいいところですね。

発達障害の僕から「学校に行けない子どもたち」に伝えたいたった一つのこと

加藤 学校へ行けない子が学力を埋め合わせるために、借金玉さんのおすすめはありますか?

借金玉 僕は、圧倒的に「本を読むこと」をおすすめしています。僕が大学に行けた唯一の理由は、小さい頃から本を読んでいたから。これに尽きます。

言語というのはすべての基盤。本をたくさん読むと、文字を読むことに慣れる。つまり、読解力が付きます。読解力が付くと、テストの問題を読み解くのが早くなる。何かを学ぶ効率も、圧倒的に上がります。

よく「早稲田大学の受験勉強は何をしたんですか?」と聞かれるんですが、正直なところ、過去問を何度も何度も、繰り返し解いていただけなんですよ……たいした受験ノウハウではなくて恐縮なんですが。

加藤 小さい頃から、本を読むのを習慣化できればいいですね。

借金玉 確かに、おっしゃる通りです。本を読むのは一つの技術なので、いきなりできるようにはなりません。大人だって、習慣化するのは結構時間がかかりますよ。

だから、「読め!」と強制するのではなくて、家に本をたくさん置いておくのがいいと僕は思います。漫画でも、絵本でもいい。そしたら、子どもが読みたい本を勝手に読みますから。

僕が親に唯一感謝しているのは、家に文学全集が大量にあったことですね。多分父親が見栄のためだけに買って、誰も読まずホコリをかぶっていたんですが(笑)。

加藤 ベネッセの調査によると、本好きになるきっかけは、子どものころに本を読み聞かせてもらったこと、身近な人が本好きだったことが多いそうです。読み聞かせって字が読めない幼い子ども向けのイメージが強いかもしれないですが、実は中学2年生くらいまでは、読む力が聞く力に追いつかないと言われています。大人が読み聞かせをしてあげることで、子どもは「わかった!」「面白い」という体験ができ、もっと読みたいと思うようになります。読み聞かせはぜひお勧めしたいですね。

発達障害の僕から「学校に行けない子どもたち」に伝えたいたった一つのこと加藤紀子(かとう・のりこ)
1973年京都市出まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、国際バカロレア、教育分野を中心に「NewsPicks」「プレジデントFamily」「ReseMom(リセマム)」「ダイヤモンド・オンライン」などさまざまなメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。一男一女の母。膨大な資料と取材から「いま一番子どものためになること」をまとめた『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』が15万部を超え大きな話題となっている。