『子育てベスト100』著者の加藤紀子さんは、借金玉さんの著書『発達障害サバイバルガイド』について、「当事者向けに書かれた本だが、実は子育てにも使える」「親が感じる“子どものことをわかりたい”“でも、どうしたらいいかわからない”という悩みに、具体的でわかりやすいヒントを教えてくれる良書」と、この本を絶賛しています。
今回、この二人の対談が実現。「子ども」「親」それぞれの立場から、発達障害と子育てについて語ってもらいました。(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/柳原美咲)
※対談第1回はこちら:発達障害の僕から「自分の子は発達障害?」と悩む親に必ず伝えたい2つのこと

発達障害の僕が「親にして欲しかったこと」「してほしくなかったこと」

「○○するな」は親から子への呪い

加藤紀子さん(以下、加藤) 借金玉さんはご自身の体験を踏まえて、子から親へ「こういうことを欲しかった」「こういうことはして欲しくない」ということを挙げるとしたら、どういったことがあるでしょうか?

借金玉 僕の場合は毎日毎日父親から「ちゃんとやれ!」と言われるのが本当に辛かったです。自分は頑張ろうと思っているのにできない。みんなはできてるのにできない。でも、10歳の子どもって、「ちゃんと」って何をすればいいのか、本当にわからないんですよ。

 あとは、加藤さんも『子育てベスト100』で書いていましたけど、やっぱり過保護というか「先回りしちゃう」のはあまりして欲しくないですね。「○○してはいけない」「危ないことをしてはいけない」と強く禁じるのは、けっこうな呪いになってしまいますから。

加藤 発達障害の子を持っていると、特にそうしてしまう傾向はありよね……きっと。

借金玉 どうしても心配ですからね、僕の親もそうでしたけど。特にADHDの子なんて、車が走っている道路に向かって爆弾みたいに飛んでいきますからね。

 心配なのはすごくよくわかるんです。でも、禁止しても飛んでいっちゃう子はまだよくて、特にASDの子なんかは、禁止されたら「世界の上限」を作ってしまって、そこからまったく出なくなります。その呪いの方が怖いなと僕は思っています。もちろん、危ないことをしたら叱るのは大事なんですけど。

加藤 子どもの周りを先回りして危険を回避してしまうという話は、日本だけでなく、世界的な傾向でもあって「ヘリコプターペアレント」とか「カーリング育児」なんて言葉が生まれるくらい、けっこう問題になっていますね。

借金玉 それはホントよくないですよね。僕の場合は親に反抗しまくったことで過保護から距離を置いてきたので、なんとか回避できましたけど。呪いを真正面から受けてしまう子もいるので、本当に注意した方がいい。「助けてくれ!」と聞こえたら「浮き輪を投げる」くらいでいいと僕は思うんですけど。

加藤「助けてと聞こえたら、浮き輪を投げる」いい表現ですね。

発達障害の僕が「親にして欲しかったこと」「してほしくなかったこと」加藤紀子(かとう・のりこ)
1973年京都市出まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、国際バカロレア、教育分野を中心に「NewsPicks」「プレジデントFamily」「ReseMom(リセマム)」「ダイヤモンド・オンライン」などさまざまなメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。一男一女の母。膨大な資料と取材から「いま一番子どものためになること」をまとめた『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』が15万部を超え大きな話題となっている。