ウエルカムになりきれない地方在住の家族の心情

 Bさん(40歳男性)も帰省した。地元には弟妹がいて両親のケアをしてくれているが、一応長男としての使命感を薄くだがBさんは抱いていて、せめて年に一度は帰省して実家の雑事を片付けないと落ち着かない。なおBさんは独身なので、帰省先は実家の一カ所のみである。
 
 Bさんは、Aさんと違いPCR検査を受けはしなかったが、代わりに日ごろからかなり厳しい自粛生活をしている自負があったので、「帰省先でコロナをうつしてまわる心配は限りなく低いであろう」と高をくくっていた。ただ、それくらいの危機管理の意識をしている人は結構いるもので、お世辞にもBさんの自粛意識が高い方ともいえないし、一般的ともいえる。
 
 Bさんも、帰省の折に旧友との集まりを例年開催していた。Bさんの友人らは、Bさんが東京にいるときから「今年は帰ってくるな」「コロナを持ち込むな」とストレートに散々言っていたが、Bさんが帰省を強行すると渋々と、しかしどこか喜々としてBさんを迎え入れた。
 
 すべて例年通り、というわけにはいかないが概ねリラックスして帰省を楽しんでいたBさんだったが、滞在が数日過ぎたころ弟妹から「いつまでいるつもりなのか」と語調強めに詰め寄られた。

 すぐさまBさんは臨戦態勢となり、「いたら問題あるのか」と返すと、「悪いとまでは言わないが、好ましくはない。両親も高齢だし、もしコロナに感染したら重症化のおそれがある。東京から来た人だという自覚はきちんと持ってほしい」と、凛(りん)とした構えを見せた。

 「東京から来たという自覚はちゃんとある。そもそもお前たちは東京を怖がり過ぎだ」などと応戦したが、意見は平行線のまま話はうやむやに終息した。居心地が悪くなったBさんは翌日東京に戻っていった。
 
「(弟妹に)言われたときはムッと来たが、冷静になってから考えると彼らの言い分はよくわかる。たしかに自分の振る舞いは、リスク管理の意識が低かったかもしれない。彼らが東京を怖がり過ぎているという考えは変わらないが、住んでいる環境が違うので別々の価値観が育まれるのは仕方のないこと。そこにこちらの考えを押し付けようとするのはよくなかった。
 
 今回の帰省は、リスクをちゃんと意識しつつ彼らの心情、東京に対する恐怖心をきちんと斟酌(しんしゃく)して行動すればよかったと、やや反省している」(Bさん)
 
 今回の帰省をきっかけに兄弟間に溝が生まれることが危ぶまれたが、Bさんが自分なりに反省したようなのでおそらく今後はなんとかなるであろう。
 
 現在、多くの人が経験したことのない規模のパンデミックに戸惑いつつ、国内総員態勢で当たっているところである。その戸惑いを起因として人間関係にひずみが生じてしまうことも少なくないだろう。ケースによっては両者の言い分に正当性が感じられ、そうなるとどちらが正しい、悪いではなく、どちらも被害者のようなものだから、「罪はコロナにあり」として不要なあつれきを極力回避して過ごしていきたいものである。