円ドル紙幣円高を予想外に大きく進展させる「3つのイベントリスク」とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

コロナ禍のドル円の値幅は
リーマン後と違って小幅に

 コロナ禍に見舞われた2020年のドル円の値幅は約11円だった。比較として、リーマンショック後の値幅を見ると、2008年は25円強、翌2009年も16円強の値幅があった。コロナ禍のドル円の変動幅は小さいことがわかる。

 為替は需給で決まるが、ドル円の需要の変化は、短期的には貿易取引などに伴う実需よりも、為替取引での利益を狙う投機需要と、投機需要を動かす政府や中央銀行の政策対応に左右されやすい。

 今後、ドル円が急激に変動するリスクを考察するには、まずはリーマンショック時と比べて、コロナ禍のドル円の変動幅が小さかった理由を明確にするといいだろう。

減少した円の投機ポジション
背景に「内外金利差」の縮小

 コロナ禍でドル円の変動幅が小さかった一因として、円の投機需要が減ったことが考えられる。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、非商業部門(投機筋)の円売りドル買いポジションは、2007年に一時190億ドルまで膨らみ、主要通貨(ユーロ、円、豪ドル、英ポンド、カナダドル、スイスフラン)において最大だった。投機筋はリーマンショック後、円買いドル売りポジションを増やした。この結果、主要通貨のうち2008年末に対ドルで買い越しだったのは円だけだった。

 昨年も、投機筋が円売りドル買いポジションから円を買い戻す過程で、円高が起きた。しかし、コロナショック前の1月下旬、ドルに対する円売りポジションはユーロ売りポジションの約半分しかなかった。

 リーマンショック時との違いは、内外金利差の縮小で、投機筋の円の利用が減ったことだろう。リーマンショック前、主要国で政策金利が1%未満だったのは日本だけであり、米連邦準備理事会(FRB)の政策金利は2%、欧州中央銀行(ECB)は4%台だった。当時は金利の低い円で資金を調達し、金利の高い他国通貨で運用する金利裁定取引(キャリートレード)が流行した。しかし昨年は、ECBの方が日銀より政策金利が低かったため、キャリートレードでの円売り規模は小さかったのだろう。