返事は良いが、人の話が染み込まない

 返事が良いのは悪いことではないが、返事だけ良くて、実は聴いていないというのは実害があって困る。返事が良いと、指示した側は伝わったものと思ってしまうが、指示したはずのことが実行されないことが多くて困る。そんなふうに嘆く人もいる。

 たとえばこんな例だ。ある作業を頼んでおいたので、どこまで進んでいるかを確認すると、全然違うことをやっていた。

「それは後で良いからこっちを至急やってほしいと言ったはずだけど」

 と言うと、

「すみません、急いでやります」

 となる。

 こんなことが頻繁に起こるが、その素直な態度からして、こちらの指示を故意に無視したわけでもなさそうだ。反抗的な様子はまったくない。さぼっていたわけでもなさそうだ。

 本人に悪意がないからといっても、これでは仕事を安心して任せることができない。細かくチェックされるのは面白くないだろうとは思うのだが、頼んだことができていないと大変なことになるので、どうしても目を光らせざるを得ない。

 なぜこんなにのみ込みが悪いのか。書類作成や情報収集の手際の良さを見ても、プレゼンテーションの緻密さを見ても、けっして頭が悪いわけではない。それなのに、なぜか人の言うことをちゃんと受け止めずに行動することが多くて困る。

 有能な人物だからこそ、コミュニケーションの悪さが残念でならない。それさえ改善されれば、安心して仕事を任せられる人材になるのに…と戸惑う。

しっかり聴いてるつもりなのに、ミスが多くて叱られる

 逆のパターンもある。自分では言われたようにやったつもりなのに、「何で勝手なことしたんだ」「どうして言われた通りにやらないんだ」と叱られ、落ち込むという人も少なくない。
 
 それが上司の勘違いなら、まだ救いようがあるが、言われてみると、確かに自分が指示を受け取り損ねて見当違いなことをしているのだという。

 ある若手は、上司から怒ったような口調で呼び出され、

「今週は新商品に力を入れて営業するということになっていたはずなのに、いったいどういうつもりだ?」

 と怒鳴るように問い詰められた。

 怒鳴られて初めて彼は上司の指示を無視して動いていたことに気づいた。先週までと同じような営業をして回ったため、新商品の発注がまったくなかったのだった。

 しっかり聴いているつもりなのに、なぜしょっちゅう間違えてしまうのか。聴いてるつもりだけで、実際には聴いていないのか。それとも、その場ではしっかり聴いてるのに、すぐに頭から抜けてしまうのか。彼は自信がなくなり、落ち込んでいた。

 別の若手は、上司と顔を合わせるなり、

「どうなってるんだ?何で指示通りに動かずに勝手なことをするんだ!」

 と怒鳴られた。自分では上司の指示通りに動いているつもりだったので、最初は上司の勘違いだと思った。

 ところが、自分以外のメンバーはみんな自分と違うやり方で動いていたのがわかった。みんな一緒の場で指示を受けたのだから、やはり自分が指示をちゃんと理解してなかったことになる。

 なぜ言われた通りに動けないのか、自分でもよくわからない。聴いたことが頭の中に整理されないせいか、いつの間にか抜け落ちてしまう。自分の聴き方には、何か致命的な欠陥があるんじゃないかと心配になってきたという。