私たちが調べた結果、手で20秒間ブラッシングした場合と同程度の効果が、音波歯ブラシでは5秒間のブラッシングで得られました。ブラッシングの時間短縮が可能で、手で磨くよりも効率的です。さらに、音波歯ブラシなら、歯垢だけでなく、できはじめの歯石も取り除くことができます。

 音波歯ブラシがいいなら、「超」音波歯ブラシはもっといいのではないか、と思う人もいるかもしれませんが、必ずしもそうとはいえません。というのも、超音波歯ブラシは、整形外科の治療で使われるような大きな装置(超音波治療器)だと骨の細胞を活性化するような効果を得られますが、歯ブラシのような小さな器具だと超音波を発信する装置が小さくならざるをえず、出力が低く、歯ぐきへの刺激効果があまり期待できないからです。

 そのため、電動歯ブラシを使うなら、私は音波式をおすすめします。ちなみに、音波歯ブラシを使う場合、研磨剤の入った歯磨き剤は使用しないでください。電動歯ブラシだと、手で磨くときよりも歯が削れやすくなります。

 歯は表面にあるエナメル質に守られているうちは痛みを感じることはありませんが、エナメル質が削られたり、エナメル質のない歯根が見えてきたりして、象牙質が露出すると、熱いものや冷たいものなどの刺激が歯の内部の神経に伝達されて痛みを感じます。それが象牙質知覚過敏症です。

 また、どんなに高機能の電動歯ブラシを使っても、別途「歯間の清掃」は必要です。歯間の歯垢は電動歯ブラシでは除去しきれないからです。必ず「歯間に入る歯ブラシ」や歯間ブラシを使って、歯間のケアを忘れないようにしましょう。

(監修/神奈川歯科大学大学院歯学研究科教授 山本龍生)

◎山本龍生(やまもと・たつお)
神奈川歯科大学大学院歯学研究科教授・歯学博士。1964年岡山県生まれ。岡山大学歯学部卒業後、同大学歯学部予防歯科学講座助手、米国テキサス大学客員研究員、世界保健機関(WHO)インターン、神奈川歯科大学大学院歯学研究科准教授等を経て、現職。歯・口の健康と認知症やうつなどの全身の健康との関連を研究調査するなど、予防歯科学、口腔衛生学、社会歯科学の第一人者。