「相手の期限」を逆手に取る

 交渉には「期限」が設けられている場合も少なくありません。

 期限において、相手のほうが切羽詰まっているとわかった場合は、そこに付け入らない手はないでしょう。

 譲歩したくない「本丸の論点」については、「そちらのご要望に応えられるよう、努力しています」風を出しつつも、結論は後回しにして、細部から少しずつ詰めていきます。

 そして、相手の期限が間近になったあたりで、本丸の論点を一気に詰める。

 その時点で、相手の意識は「期限を守ること」に向いています。期限通りに合意するために、こちらの出した条件が多少、相手にとって不利でも、「イエス」と言ってくれる場合が多いのです。

 ありとあらゆることに「期限」があります。会社なら、もっともわかりやすいのは決算時期でしょう。また、離婚問題であれば、多くの親は子どもの入学時期までに解決したいと考えます。そうした期限を利用します。

 たとえば、相続問題では、多くの場合、7月下旬頃から急に「お盆に親戚が集まるまでに解決したい!」という気持ちが高まってくるので、こじれた相続トラブルの際にはこの時期に狙いを定めます。5~6月頃は、関係者それぞれの主張を聞いたりして、のらりくらりと時間を稼ぎます。

 大切なのは、この時点で解決策を提示しないこと。期限を意識していない相手に解決策を持ちかけ、それに反発された場合、態度が硬化してしまいます。そうなると、いくら期限が近づいてきたタイミングで交渉を仕掛けたとしても、合意に持ち込めない恐れがあります。

 相手の期限が来るまで、本丸の交渉はじっと待つ。期限が近づいてきたら、それをちらつかせつつ、一気に攻める。これがポイントです。

 また、相手に期限を意識させるひと言を伝えるというテクニックもあります。

「お盆までに解決の目処を立てませんか? そうすれば、すっきりした気持ちで、親戚の方々と顔を合わせられますよ」

 などと提案すれば、期限があることを意識させることができます。

 これまで「じっくり考えればいいや」と思っていたところにいきなりデッドラインを突きつけられるので、相手はかなり慌てるはずです。その隙をついて、こちらの要望を押し通してしまうのです。