そもそも
銀行の引き当ては十分だったか

 公的資金の導入というと大袈裟に聞こえるかもしれないが、そもそも銀行の自己査定における中小企業向け貸付債権の債務者区分は、金融庁による指導もあり、やや甘かった面がある。その傾向は、リーマンショック後の2009年に導入された金融円滑化法の施行で加速したまま今に至っていると言ってよい。

 図は、全国銀行の債務者格付けの推移である(出所:金融庁)。先に述べたように、「要管理先」以下が開示債権、いわゆる不良債権に該当する。平成14年3月期は、ちょうどバブル崩壊後の不良債権処理が進められた時期だが、その時には不良債権の額が43.2兆円にも達している。それに対し、昨年度は6.9兆円だ。特に留意すべきなのは、「要管理先」の少なさであり、各銀行が、多くの融資先を、「要管理先」に落とす1段階前の「要注意先」に留めてきたことがわかる。

 中小企業であるがゆえに政治的にも地域経済的にも不良債権に分類することを避け、抜本的な事業改善に乗り出せなかった面がなかったか、この機会に今一度振り返った上で、融資先の過剰債務問題の抜本処理を行う方が、長い目で見れば地域経済、ひいては日本経済の活力に繋がるのではないかとも思える。

銀行自身が
債務免除やDESをすることは難しい

 先に述べたように、企業の過剰債務問題を解決し、資本性の支援をする方法としては、銀行による債務免除(銀行から見ると債権放棄)やDESが有効である。しかし、これは決して容易な話ではない。

 第一に、地域金融機関にとっては、取引先の選別という難題に直面する。たとえば同じ商店街のA商店に債務免除をする一方で、隣のB商店には債務免除をしないという場合、どうしてそうなのかを説明する責任が生じるだろう。A商店の方が実現性の高い抜本的な経営改善計画が立てやすく、地域の将来にとっても重要だと銀行が判断したとしても、B商店から見れば不満が残ることは想像に難くない。

 第二に、経営者による保証の問題が残る。最近は「経営者保証に関するガイドライン」が制定され、また、担保や保証に頼らない融資も推奨されているものの、現実的には債務免除をしようとすると、その前に経営者の保証履行を迫らざるを得ない。中小企業の場合は経営者と企業は一心同体であることが多く、それでは事業の再生には必ずしも繋がらないことが多い。

 第三に、銀行が株式を取得しても経営責任が取れないことだ。昨今の規制緩和で銀行は経営不振先については持ち株規制の対象から外すことができるようになったが、株主になるということは経営責任を負うということである。融資先の取引先や従業員に対する責任を銀行が負うことができるはずがない。また、銀行員で一般事業会社の経営に関わったことがある人材は少なく、実際問題として経営を行うことは容易ではない。

 これらに加えて、税務的にも銀行が自分自身で債務免除やDESをした場合に損金に算入できるかどうかは個別に判断されることとなり、不確実である。