ROEは、ROAに財務レバレッジをかけた値

カノン そこなんですけど。借金を増やせば利益が増えるという意味を、もう一度説明してください。

林教授 利益をもたらすのは何だったかな?

カノン 資金を運用した資産です。

林教授 そうだね。借金して使える資金が増えれば事業規模は拡大する。とはいえ、何でもかんでも投資金額を増やせばいいというわけではない。利益をもたらす資産を選び抜いて大胆に投資しなくてはならない。

カノン 借金した資金を上手に使うから利益が増えるんですね。

林教授 そういうことだ。ソフトバンクがなぜ急激に世界的な巨大企業に成長できたのか。それは、借金で自己資本の5倍の資金を動かしたからだ。

カノン 借金が上手だってことですね。

林教授 そうだね。その投資先が利益を上げてきた。実はROEの式には重要な部分が隠れているんだよ。

カノン なんですか?

林教授 次の式を見てごらん。分母と分子にそれぞれ総資産を挿入する。

 

林教授 総資産と総資本(他人資本と自己資本)は同額だから、ROEは、ROAに財務レバレッジをかけた値ということだ。この意味はわかるかな?

カノン 式は理解できますけど、どんなことを意味しているかはわかりません。

林教授 こう考えるのだよ。まず、利益は資金の運用、つまり資産によってもたらされる。この割合を表した指標がROAだったね。

カノン はい。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。