ドル円は一時103円割れ
円高ではなくドル安の動き
ドル円は2020年後半からじり安基調を続け、今年1月6日には一時102.59円へ下落した。こうしたドル円下落の局面は、(ドル円相場に注目が集まりがちな日本では特に)円高局面と認識されがちだ。しかし、日銀が算出する貿易加重平均の円相場をみると、ドル円は下落したものの、円安が緩やかに進行している。
これは、円がドルに対して上昇している一方で、人民元、人民元と連動して上昇したアジア通貨、そしてユーロに対して下落した影響が大きいためだ。貿易加重平均の円相場における各国・地域の比率を見ると、人民元が31.9%と最も大きく、ドルは16.5%と人民元の半分程度。ユーロは12.7%とドルに迫る比率となっている。
つまり1月6日までの円相場は、中国の迅速なコロナ感染抑制と景気回復、ユーロ圏での(将来の財政統合につながり得る)EU復興基金設立といった米国以外の好材料を背景に、人民元・ユーロ主導のリスクオンによる円安局面だったと言える。
もっとも6日以降の円相場は、米国で民主党統合政府(民主党が大統領職と上下両院の過半数議席を獲得する状態、いわゆるトリプルブルー)が誕生し、大規模財政出動への期待感が一気に高まったことから、米国発の好材料を背景にドル主導のリスクオンによる円安にシフトしていく可能性も期待される。すなわち、米長期金利の上昇とともに、ドル円が上昇しやすくなると筆者は考えている。