現在の所在が不明な親族がいると、戸籍の附票で調査することになる。改姓されたり新戸籍が作成されたりしている場合、それを現時点まで追いかけていくことになる。2週間以内に保護の可否を判断するためには、その作業を短い期間で集中して行わなくてはならない。三親等内に親族が10人いるのなら、10人分行うことになる。

 その手間隙をかけても、自治体が財政的に期待したい「引き取ります」「仕送りします」という回答は、ほとんど得られない。東京都内の自治体で明らかにされている実績では、多くて0.4%なのだ。「皆無」という自治体もある。

「扶養照会を減らすと、新規申請の作業量が減って負担感は軽減されるでしょう。保護の開始決定までの迅速な事務処理につながると思います。その時間を、他の方の援助に充てることもできます」(田川さん)

事務作業が増え、効果はほとんどなし
それでも扶養照会を続けるか

 では、どの程度の作業量削減につながるのだろうか。関西の生活保護の現場で働く現役ケースワーカー・大川さん(仮名・30代)に聞くと、「申請受け付けから可否判定までの作業のうち、扶養義務者の存在確認・扶養を期待できる可能性の確認・戸籍調査・扶養照会の発送業務を含めて、体感で2~3割」ということだ。

「機械的に、親族だからという理由で扶養照会をする場合は事務的負担が大きくなり、申請した制度利用者さんに配慮すると、心理的負担が大きくなるのではないかと思います」(大川さん)

 事務作業を削減するということは、ケースワーカーが単に「ラクになる」ことを意味するのではない。削減された作業量は、感情労働の負荷となる場合がある。

「『なるべく親族との関係を維持できるようにすべきではないか』と思われる場合、扶養照会はしない方向で考えます。すると、上司を説得したり、府県の監査対策を行ったりする必要があります。時には、手続き的に親族の方に扶養照会の書類を送付しつつ、ご本人から『扶養できません』と書いて返してよい旨を伝えていただくこともあります」(大川さん)

 扶養照会は、その人のその後の人生と人間関係のために、形骸化させることもできる。しかしそれならば、そもそも扶養照会がなくなればよいのではないか。