会社の命を削ってまでも、ROEを高めるべきではない

カノン でも、ちょっと変だなあ。借金漬けにするほどROEが高くなるなんて危険ですよね?

林教授 それは、さっきボクが指摘した点だね。調達した資金の運用が利益を生んでいるうちはいい。だけど、十分な利益をもたらさなかったり、事業に失敗してROAが低下し始めたら危険信号だ。

カノン それでも、株主はROEしか興味がないのですか?

林教授 会社の成長を考えて、株式を長く保有する株主はROAを重視する。目先の利回りだけを考えて、配当と株価の値上がりだけしか興味がない株主はROEしか考えない。ROEが下がればさっさと株式を売ってしまうんだ。

カノン 金の切れ目は縁の切れ目ですか…。株主って冷たいんですね。

林教授 そうともいえるね。会社の経営が悪化した場合、株主は株式を売り逃げすればいい。だが経営者はそうはいかない。常にROAの向上を目指さなくてはならない。確かにROEは大切な指標だ。けれども、会社の命を削ってまでもROEを高めるべきではない。

カノン 会社の命ですか。ちょっと大げさでは?

林教授 まあ聞きなさい。式からわかるように、ROEを高めるには税引き後当期純利益を増やすか、自己資本を減らせばいい。

カノン そうですね。