会社経営の原点は持続可能性

林教授 最も効果的にROEを高めるには、市場に流通する自社の株式を買えばいいよね。これは自己資本を直接減らす効果がある。アメリカには、借金して自社株買いを進め、その結果、債務超過に陥ってしまった会社が少なくないんだ。

自己資本ー自社株式<0……債務超過

カノン 先生、債務超過って何でしょうか?

林教授 会社の負債の総額が資産の総額を超える状態のことだ。

カノン 借金のし過ぎですね。でも、しっかりした会社はそんなことはしませんよね?

林教授 さあどうかな。新聞に「レバレッジ経営」というこんな記事が載っていた。

「財務体質を強化するより、自社株買いで株主に還元する傾向が強かった。借金して自社株買いする企業もあり、マクドナルドやヒルトンは負債が資産を上回る債務超過となっていた」(日本経済新聞2020年3月26日)

カノン どちらも超有名な会社ですね。

林教授 誰でも知っている会社だ。言うまでもないことだが、会社経営の原点は持続可能性なんだよ。今回のコロナ禍によって、株主のご機嫌取りのためにROEを重視しすぎて、財務体質を犠牲にしてきた会社が窮地に陥っている。経営者の信念が問われているといえるね。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。