同白書によると、仕事を理由のひとつとする自殺は年間2000人以上、業務による心理的負荷を原因とする精神障害は、労災請求件数だけでも1500件と15年前の7倍です。当然、労災など請求できず、仕事を原因とするうつ病で苦しむ人の数は、これより桁違いに多いはずです。
最近は政府も「働き方改革」と称して長時間労働を是正しようと動き出していますが、「働く時間を短くしましょう」「はい。そうしましょう」と言って問題が解決できるほどコトは簡単ではありません。
私は、初著『ゆるく考えよう』では、高すぎる目標を持たず、頑張りすぎずに生きるライフスタイルもありうると提案、2013年に出した『未来の働き方を考えよう』では、延び続ける定年まで延々と働かなければならないこの時代に、みなさんは本当に今の働き方をあと何十年も続けたいですか? と問いかけました。
そして本書では、多忙さの本質を理解し、それを脱するためのスキルとはどのようなものなのか、という観点からこの問題を取り上げています。表紙を見て気づかれた方も多いと思いますが、この本は『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』に続くシリーズの3冊目で、本シリーズでは一貫して「今後の社会を生きていくために、そして人生を楽しむために、私たち全員が身につけるべき根幹の能力とはなになのか」というテーマを扱っています。
それは英語力や財務の知識といったテクニカルな能力ではありません。資格やプログラミングといった“手に職”のことでもありません。私が本シリーズで提示し続けているのは、社会の進んで行く方向性を見極め、自分の時間を世間の目や会社の論理から取り戻すために必須となる「自分の人生を生きる力」「オリジナルの人生を楽しむ力」を構成する現代社会のサバイバル能力なのです。
今回の本では、ふたつの異なる視点からこの問題にアプローチしました。個々人が直面する超多忙な生活からの脱出方法について考える視点と、今の社会で急速に進みつつある変化の本質に焦点を当てた視点です。
このふたつの視点をもって見ると、そこには共通する、ひとつの「答え」が浮かび上がってきます。詳しくは本文をお読みいただくとして、まずは序章に登場する4人の生活振りをご覧ください。
第一志望の会社でバリバリ活躍する正樹、仕事と育児を両立しようと奮闘するケイコ、リーマンショック、ブラック企業、底辺フリーランスと苦境の数々を経験してきた陽子、そして、起業に成功しながらも踊り場を迎えて悩む勇二。
4人の物語から浮かび上がるものと、今の社会で進みつつある大きな変化。それらを俯瞰したとき、私たちが理解すべきこと、身につけるべきスキルとはなになのか。
本書を読まれたみなさんが自分の時間を自分の手に取り戻し、やりたいことを少しでも多く実現できる「自分の人生」を謳歌できますよう、この本によってそのお手伝いができることを、著者として心から願っています。
社会派ブロガー ちきりん