オリンピック開催はコロナ対策の一環にできるはず!

 私が「議論すべき」と提案するのは、オリンピックの開催が、「重要なコロナ対策の一環にできる」と感じているからだ。

 いまのところ、コロナ対策とオリンピックは正反対を向いているように理解されている。「コロナ禍に対応すべきなのに、オリンピックなどやる気か!」といったフレーズがそれを表している。そうではない。オリンピック開催を模索し、スポーツを安全に推進する環境づくりを目指すことが、コロナ禍への具体的な対策の発見や開発にもつながる。そのことをもっと多くの人が理解し、着目してほしいと思う。

 過去にも紹介したが、例えば、女子レスリングで有名な至学館大は元々学内にあったPCR検査機を活用し、昨年10月から全学生と全教職員を対象にPCR検査を始めた。レスリング部の部員やOGも、県外の合宿や大会から戻ったら通常は自粛期間を設けるが、PCR検査で陰性とわかれば、すぐ練習に復帰できる。聞けば、自然科学系の学部を持つ大学なら、たいていPCR検査機は持っているという。

 ところが、厚労省と文科省の縦割り行政の下、文科省管轄下のPCR検査機はほとんど活用されていない。取材によれば、東京の大学だけで、100を超えるPCR検査機があるという。もちろん主目的は研究用だからそのすべてを供出してもらうのは無理としても、オリンピック関連用に何割かを使えるように協力してもらえれば、一般の人々の検査に影響は与えずに済む。

 また、オリンピックの後も一般に活用できれば、オリンピックをきっかけに検査環境を増強できたことになる。このように、オリンピックをやるために、コロナ対策の新しい可能性を開発する発想は重要ではないだろうか。

 スポーツは言うまでもなく、最先端の人間科学の分野だ。アメリカのNASAのアポロ計画が、宇宙を目指した副産物として日常生活に応用できる無数の新素材や技術を生み出したことはよく知られている。スポーツも同様に、コロナ禍にあって、これを乗り越える手がかりを得るためのチャレンジができる領域だ。そこにこそ、スポーツの社会的意義のひとつがあると私は考える。

「スポーツをすればコロナにかからない」とまでは言わない。だが、心身の基本的な健康と活力を育み、免疫力を高める効果がスポーツにあることは証明されている。ステイホームが求められ、「コロナ鬱」といった新しい苦悩が生まれている中で、スポーツの果たす役割は大きいはずだ。スポーツを止めてはいけない。どんな方法なら許されるのかという試行錯誤は必要だ。

 せめて、頭ごなしに「オリンピック中止」を叫ぶのでなく、上に挙げた一例のように、スポーツがコロナ禍に貢献できる可能性も含め、アイデアを出し合い、不安の種をひとつひとつ消していく努力が先になされるべきだろう。

(作家・スポーツライター 小林信也)