明智光秀が主人公に
適していた理由

――これまでの回を振り返って、出演者同士の掛け合い、脚本、撮影ロケーションなど「これは意外だった」と思う点はありましたか?

 池端さんの中に「帝」を描くことへのこだわりがあることが、台本が出来上がって初めて浮かび上がってきました。そもそも、明智光秀が帰蝶(きちょう/「美濃姫」「濃姫」の呼び名でも知られている織田信長の妻)と共に「織田信長」を生み出し、やがて自ら信長を討つ。これを一つの大河ドラマに落とし込むというのは、私が言うのもなんですがとんでもない異色作だと思います(笑)。

 ですが、室町末期の時代そのもの、武士・朝廷・貴族・民すべてを俯瞰して描こうとした池端さん、そしてスタッフの挑戦は、高く評価されてよいものだと確信しています。

信長と光秀「大きな国」づくりを目指した光秀と信長。やがて2人は袂を分かち、「本能寺の変」を迎える (C)NHK

――特に印象に残っている回を教えていただけないでしょうか。

 将軍・足利義昭との溝が深まり、信長や光秀が室町幕府から離反した第36回「訣別(けつべつ)」です。

 この回の脚本を読んだとき、室町末期の時代そのものを描きたいとおっしゃっていた池端さんにとって、織田信長と室町幕府に両属した謎の多い「明智光秀」という人物がいかにこの物語の主人公にふさわしい存在であったか、はっきりとわかりました。地方の戦国大名、中央(京)の将軍と朝廷。これらを縦断するのに光秀ほど適した主人公はいないのです。

――今川義元、松永久秀、足利義昭など、これまであまり評価がなされてこなかった武将の印象を塗り替えました。その辺りはやはり意識したのでしょうか。

 もともとそういうつもりはなかったのですが、「結果的に」ですね。当初、1540年代ぐらいの戦国時代をやりたいと、池端さんに相談を持ちかけました。そこからさまざまなアイデアを融合し、磨き上げていった結果、明智光秀、斎藤道三、松永久秀など、これまでのドラマなどではどちらかというと悪役や梟雄(きょうゆう/残忍で強い人物)として扱われてきた戦国武将を、輝きのある人物として独自に際立たせることができて、大変楽しかったです。

 光秀を表舞台に上げるきっかけとなったキーパーソンが帰蝶です。斎藤道三の娘で、織田信長の妻。この帰蝶が光秀の親戚にいたことは大きく、このことにスポットを当てた点も新鮮だったと思います。

物語全体の結末としての
「本能寺の変」

――第39回「本願寺を叩け」では、光秀と妻・煕子の別れがとても美しく描かれ、評判となりました。

 出来上がるまで最も苦労した回でした。視聴者の皆さんがそのように受け取ってくださったのはうれしい限りです。

――特に気に入っている回を教えていただけないでしょうか。

 第41回「月にのぼる者」です。帝と光秀が直に対話をするシーンは圧巻でした。坂東玉三郎さんという類いまれな存在が、圧倒的な輝きを見せた瞬間だったと思います。

――本日放映の最終回「本能寺の変」について、ネタバレにならない範囲で見どころを教えてください。

 人の行動というものは、何か一つのことで割り切れるものではなく、複雑に入り組んだ事情とタイミングのたまものです。池端さんはそこをよくわかっていらっしゃいましたし、強く意識されていました。物語全体の結末としての本能寺の変、いわば「麒麟がくる説」をお楽しみいただければと思います。

 そして、長く積み上げてきた長谷川博己さんと染谷将太さんの二人芝居を、最終回でどこまで突き詰めているのかも、ぜひご覧になってください。

――「次はこの人物にスポットを当ててみたい」という歴史上の人物はいますか?

 天草四郎ですね。四郎個人以上に、島原の乱を起こした一揆軍、キリスト教に殉じたキリシタンや農民たちの集団に興味があります。

「麒麟がくる」プロデューサーを最終回直前に直撃!明智光秀が主人公たる理由本能寺へと向かう明智光秀(C)NHK

訂正 記事初出時より以下の通り表記を改めました。
3段落目:池端俊作さん→池端俊策さん
(2021年2月7日9:43 ダイヤモンド編集部)