医療崩壊が叫ばれた
大きな要因とは

「新型コロナ感染拡大の中で、第1波初期に第一線として入院患者を受け入れてきたのは感染症病床(1758床)、第二種感染症指定医療機関の351施設です。その9割は国公立・公的病院が担い、民間は1割。日本の病床全体に占める割合は0.1%に過ぎません。

 第1波のピーク時では1万1935人、第2波のピークでは1万3724人が入院していましたから、感染症病床だけでは全く不足していたことになります」

写真:渡辺幸子『医療崩壊の真実』の著者で、株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン代表取締役社長の渡辺幸子(わたなべ・さちこ)氏

 では、コロナ患者はどの様な病床で受け入れていたのだろう。

「当然、急性期病床(一般病床)での受け入れが必須になりました。急性期病床とは、急患や重症で生命に関わる治療や応急措置、手術を行うための病床です。人口1000人あたりの急性期病床数もやはり日本は7.79で世界一。第1波では病床数が不足するように言われていましたが、日本全体ではそうした危機が存在したとは考えられません。

 人工呼吸器やECMOを必要とするコロナ重症患者の治療に必要なICU病棟と、ICU病棟に準じた機能を持つハイケアユニット(HCU)、救命救急病床(ER)を含めた病床数は全体で1万7000床となり、アメリカの3分の1、ドイツの半分ですが、イタリア、フランス、スペイン、イギリスは上回っています」

 なんと急性期病床数も世界一充実しており、重症患者に対応できる病床もアメリカ、ドイツよりはだいぶ少ないとはいえ、それ以外の国よりは勝っているという。では病院数はどうだろう。

「人口100万人当たりの病院数は、やはり日本は先進国と比較して群を抜いています(ただし世界一は韓国で、日本は2位)。

 病院がたくさんあって、いつでもアクセスできるのは安心でありがたいことではありますが、一方で、医師・看護師などの医療者、さらに患者が分散する結果となって、一病院あたりの治療する患者数が非常に少なくなってしまうことにつながります。大きな手術や重症治療を要する患者の数と医療の質にはある相関があり、患者数が多く治療の経験値が高いほど医療の質も向上することは先行研究などで報告されています。

 病院数が多すぎて患者が分散していることは、国民にとって最善ではありません。

 実はこの急性期病院が多すぎて、一病院あたりの医療資源が分散していることこそが、コロナで医療崩壊が叫ばれた大きな要因なのです。

 第1波ではコロナに対応できる病院の確保が困難だったことに加え、病院あたりの医療資源が分散している現場では、手厚いケアを必要とするコロナ患者の治療に医師・看護師のキャパシティーがあっという間にオーバーフローしてしまう。このように日本全体では病床が潤沢にあっても、コロナを受け入れる病院ではひっ迫していたのです」