東京都のコロナ受け入れ病院の
37%は「集中治療専門医が1人だけ」

 実際に深刻なのは、「病床数の不足」よりも「医療従事者の不足」だと渡辺氏は指摘する。

「私たちの調査によると、中等症までのコロナ患者に対しては、患者数対看護師数を4対1から3.5対1としている病院が多いようです。一般病棟の看護体制が7対1であることを考えると、看護師の労力は通常患者の2倍かかっている計算です。

 8割以上のベッドが稼働していたコロナ患者受け入れ病院では、感染予防策を講じながらコロナ患者の治療に当たった医療スタッフの多忙さは、10割稼働に匹敵する苦労と緊張があったと思われます」

 看護体制もさることながら、重症患者を受け入れる病院における「集中治療専門医」や「救命救急医」の不足はもっと深刻だ。重症患者に対する集中治療は、ICUなどの「器」だけでは機能しない。適切な治療を施すには、ECMOや人工呼吸器を扱える専門的な知識と技術や経験を有する「集中治療専門医」や「救命救急医」が不可欠だからだ。

「ところが第1波で、567病院のうちコロナ患者を受け入れた341病院では、重症患者を診る集中治療専門医、救命救急専門医がいる病院は193病院(57%)で、これら専門医が不在の病院が4割強に上りました。入院するコロナ患者の約7割は無症状か軽症で済むものの、集中治療の専門医体制が必ずしも十分とはいえない4割の病院は、コロナ患者が重症化した場合に、重症受け入れ医療機関と密接かつスピーディーな連携が求められていたことになります。このような連携に重要なのはコロナ受け入れ医療機関の“情報の共有”です」

 それではコロナ重症度別に医療機関は役割分担と連携ができていたのか。理解するために、国内でも感染者数、重症者数共に群を抜いている東京都の現状を掘り下げてもらった。

「第1波567病院の分析で、東京都52病院のデータのうち、コロナ患者の受け入れをしていた病院は44施設あり、2月から6月の期間にこれらの施設で超~重症患者を119人受け入れていました。

 コロナ受け入れ病院のほぼ半数にあたる21病院で集中治療・救命救急専門医とユニットが整備されており、うち約7割の15病院が超~重症患者を受け入れていました。残り6病院は超~重症患者を受け入れる潜在能力はあったものの受け入れていません。

 一方、ユニット体制はあるものの集中治療・救命救急専門医が不在であった病院は19あり、うち3割にあたる7病院が29人の重症患者を受け入れていました。専門医もユニットもない病院は3施設でしたが、超~重症患者は受け入れていませんでした。

『器』があっても専門医がいない病院が、29人もの重症患者を受け入れていたわけです。もしも、超~重症患者を受け入れる潜在能力があったのに受け入れなかった6病院が、こうした病院としっかり連携できていたとしたらどうでしょう。患者はより適切な治療を受けられる可能性があったのではと考えられます」