ただ、専門医がいる病院であっても安心はできない。

「東京都の集中治療専門医がいる41病院中、15病院が『集中治療専門医の1人体制病院』です。ECMOが必要な超重症患者の場合、24時間、365日、ECMOを扱える医師が必ずベッドサイドに1人は必要になるので、たった1人の集中治療専門医では、到底対応できません(41病院以外に、ICU室を保有していても集中治療専門医がゼロという施設もあります)」

つまり東京都には、超~重症患者の受け入れに適しているはずの病院(ICUがあって、集中治療専門医がいる病院)が41あるが、約37%は1人の専門医に支えられている病院なので、不測の緊急事態に備えて2人以上の専門医は必要という視点で考えれば、本当の意味でコロナ重症患者を受け入れる『実力』がある病院は6割、26病院だけかもしれないのだ。

多すぎる急性期病院が
専門医の分散に拍車をかける

 さて、ここまで読んできて、「コロナ受け入れ病院でなぜ適正な数の専門医の配置がないのだ」と個々の医療機関に対して疑問を感じる人もいるのではないだろうか。だが問題の本質はそこではない。適正な人数の専門医を採用したくても雇えない事情があることを知ってほしい。

「集中治療専門医は全国で1955人しかいません。ただでさえ数が十分ではない状況に、急性期病院が多すぎることが『専門医の分散』に拍車をかけているという実態があります」

 しかも足りないのは集中治療専門医だけではない。

 例えば日本感染症学会が昨年7月に発表した調査結果によると、感染症治療の中心的な役割を担うとされる感染症指定医療機関でさえ、学会が認定する感染症の専門医はおよそ35%の施設にしか在籍していないことがわかっている。

 日本は、医療先進国のはずなのだが、医療における需要と供給のバランスはかなり偏っており、そういう意味ではコロナ禍以前から医療体制は危機的状況であったとも言える。

 救急医療体制にしても、「東京都では医療崩壊のせいで、コロナ以外の傷病者でも救急搬送の受け入れ先が見つからない事例が増えている」と報道されているが、東京都で搬送先がなかなか見つからないという問題はコロナ以前からあり、打開策として『東京ルール』が導入されたりしたが、状況はあまり改善されていない。

「コロナ禍は図らずも、日本の医療提供体制の問題を浮き彫りにしました。

“病院あたり”のコロナ治療に対応できる医師や看護師など医療従事者が不足していることで重要なのは、“病院あたり”ということです。

 急性期病院の数が突出して多いことに加え、人口1000人あたりの医師数はOECD平均で3.5人なのに対して日本は2.4人(2018年)しかいない上に、過剰に存在する病院に分散している実態があるのです。看護師数は人口1000人あたり11.8人(2018年)とOECDの平均並みですが分散の実態は同様です。医師や看護師の分散は、コロナ患者の治療に限らず、すべての疾患に関して共通の課題です」