岡田:一人ひとりの旅の記憶をもっと見たいなと思って、Twitterで「#0メートルの旅」とハッシュタグをつけて、記憶に残る旅の思い出をつぶやいてください」という企画をやったんです。

「ストレスフリーな人」が旅好きに多い理由投稿された大量のツイートを元にした、架空の旅行記を執筆中。

「まあ、誰も投稿しなくても僕たちが投稿しまくろう」と担当編集者と話していたのですが、フタを開けたら3日で2000件以上の旅の記憶が集まりました。もちろん全部に目を通しました。

──すごく盛り上がってましたよね。みんな、写真と一緒に投稿してて。

岡田:意外だったのは、まさにその写真です。個人に根ざしたエピソードやストーリーが、つぶやいてくれた人の数だけあって、いわゆるインスタ映えするような写真がなかったんです。もう全然、絶景写真とかじゃなくて、その辺のおっちゃんとか道が写っただけのものとか。でも、その写真一つひとつに個人的なエピソードがめちゃくちゃ詰まっていて、すごく面白かったです。

──どんな投稿が印象に残っていますか?

岡田:「小学校のときにひとりで電車に乗って隣町まで行った」とか、「50歳になってはじめてひとり旅に出て、ずっと憧れだった電車に乗った」とか。そういうのを見ていると、「ああ、きっと場所はどこでもいいんだろうな」と思いました。遠くに行く、どこかへ行く、というのだけではなくて、人の数だけ、いろんな形の旅があるんだよなと。

──今は、遠くに行けない時期が想像以上に長く続いて、フラストレーションを溜めている人も多いですよね

岡田:はい。僕も同じです。ただ、僕は南極だろうが部屋の中だろうが、どこにいても「新しい旅」は生み出せると思っています。もちろん、移動距離によって旅の性質は変わるけど、それでも距離に制約されることなく「旅への渇き」を満たすことはできる。

『0メートルの旅』という本は、「遠くに行かなくても、旅はできる」という思いを込めて書きました。冒険や辺境ばかりが旅ではない。旅とはもっと自由で、もっと身近に見つけられる存在だと。旅の消えゆく世界だからこそ、旅を見つけるための本をつくりたかったんです。

今回の本が、誰かにとっての「0メートルの旅」につながったら嬉しいな、と思っています。(了)

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