「海外へ旅に出ると人生観が変わる」というのは本当なのか?
「人生を変える旅」の共通点とは何か?
大好評の新刊『0メートルの旅』の著者・岡田悠さんに、「旅が教えてくれたこと」を聞いてみた。(取材・構成/川代紗生)
「あんまり会ったことないです。」
──「人生を変えたい」という目的を達成する手段として、旅に出ることは有効だと思いますか?
岡田悠(以下、岡田):……正直に言うと、「海外行くと人生変わる論」みたいなのって、実際に旅好きで言ってる人、あんまり会ったことないです。
──なんと。
岡田:あまり旅行に行かない人が、「海外なんか行っても人生変わらないよ」と主張するために引き合いとして出される論、みたいなイメージがあります。もちろん、そういう人もいると思いますけれど。
1988年兵庫県生まれ。ライター兼会社員。有給休暇取得率100%。そのすべてを旅行に突っ込み、訪れた国は70ヵ国、日本は全都道府県踏破。note、オモコロなどのwebメディアでエッセイを執筆し、旅行記を中心に絶大な人気を博す。本書収録のイランへの旅行記で「世界ウェブ記事大賞」を受賞。『0メートルの旅』が初の著書。
──岡田さん自身も、「この旅で人生が変わった!」ということはない?
岡田:「この国に行ったから何かが変わった」というのはないかな。というのも、僕は、旅を「定まった日常を離れて、どこか違う瞬間へ自分を連れていくこと。そして、違う瞬間へ行ったことで鮮やかに感じられるようになった日常へ回帰すること」だと思っているんです。
つまり、僕にとっての旅は、日常を鮮やかに過ごすための行為なんです。その定義に当てはめて考えると、「旅に行って人生が変わる」というのは、あまりないかなと思います。
──なるほど…。
岡田:それよりも、目の前に起きた出来事にどういう態度で接するかということのほうが大切です。旅に出ると予定通りにいかないことだらけで、バックパック盗まれたり、変な客引きにあったり、辿り着いた宿が虫だらけだったり。
そういう思い通りにいかないことや偶然の巡り合いを受け入れて、目の前にある0メートルを愛することができると、旅先でも家の中でも、鮮やかに見えるようになる。その積み重ねの先に、結果として「人生が変わる」ということはあるかもしれません。
なので、もし何か現状を変えたいとか、今の人生を変えたいと思うのであれば、「海外へ行く」「旅に出る」ことだけを考えるよりも、「どんな態度でいるか」を変えるほうが重要なのかなと思います。
旅に行ったら、イライラしなくなった。
──岡田さんのおっしゃる「結果として人生が変わった」という意味では、旅が好きなことで、結果的にどんな影響があったと思いますか?
岡田:日常生活で、イライラすることが少なくなったことですかね。
──え、なぜですか?