岡田:一見イライラしそうな出来事が起きても「ストレス」ととらえにくくなった、というのは、確実に旅の影響だと思います。トラブルだらけ、うまくいかないことだらけでも、それを軌道修正しようと思っても何も楽しくない。「面白いことを起こしたければ、『想定外』を1回受け入れてみる」というのは、僕が旅から学んだことです。
最近子どもが生まれたんですが、子育ても「予想外」の連続です。たとえば、日に日に「泣き声の種類」が増えていくんです。
──泣いている理由が違うってことですか?
岡田:そうそう。この泣き声は、オムツか? ミルクか? 抱いてほしいのか? 眠いのか? とか、僕は毎回泣いてる理由を当てようとするんですね。「あ、これは本気で泣いてないから、たぶん抱いてほしいだけなんだろうな」みたいに、予想しながら接しているとおもしろいんです。
でも、最近、その予想を超えて、フェイクの泣き声を生み出しました。
──フェイク?
岡田:それまで、本気で泣くのは、明らかにお腹が空いているときだけだったんです。それが、抱いてほしいだけのときにも「うわあああ死んでしまう、飢えてたまんねえええぇぇー!!」みたいな叫び声で泣くようになったんですよ。でも、抱っこするとすぐにおさまって、「おお、こいつ技を覚えたな……!」みたいに感心しています。
──賢い(笑)
岡田:あと、お風呂に入れてるときにウンチしたりしますし。子どもって、とにかくこっちの思い通りに動かないんですよ。そういうのを見ていると本当に面白い。日々、発見の連続です。自分も旅に行って、固定観念にとらわれなくなったとは思っていましたけど、子どもを見ていると僕もまだまだだなと思いますね。さすがにお風呂の中でウンチしようとは思わないんで(笑)。
「思い通りにいかない」がストレスじゃなくなる
──「思い通りにいかない」って、多くの人にとってはかなりのストレスだと思いますが、岡田さんにとってはそうじゃないんですね。
岡田:「いつもと違うことにこそ面白さの入り口がある」と思えるようになったのも、旅の影響かなと思っています。旅でも日常でも、予定してなかったことが起きた瞬間にいちばん興奮しますね。
同じところに旅しても、面白いことが起きる人と起きない人がいます。起きない人って、すべてを思い通りにしようとするんです。自分の思い通りにいかないことを全部排除しようとする。そういう姿勢だと、なかなか旅は面白くならないです。
ファーストインプレッションではストレスであっても、いったんそれを受け入れて、面白さに転換していく。旅はその連続なので、日常生活でもあまりストレスを感じなくなりました。ストレス許容度が上がったのかな、と思います。
「記憶に残る旅の写真」は「インスタ映え」しなかった
──岡田さんは、『0メートルの旅』が初の書籍ですよね。本を書いたことで、「旅」のとらえ方は何か変わりましたか?
岡田:本を出版したあとはTwitterで日々「#0メートルの旅」でエゴサーチして本の感想を読みまくっています。そんななか、このハッシュタグが、本の感想だけではなくて「それぞれの旅の記憶」を回顧することに使われているのを発見したんです。この本を読んでもらうことが、誰かの旅の追憶につながっていて、それがとてもうれしかった。