株式投資の基本として、上場する銘柄はグロース株とバリュー株(割安株)に大別できる。成長を続けてEPS(1株当たり利益)が伸びていきそうな銘柄に資金を投じるのがグロース株投資、収益力の実態以上に株価が過小評価され、PER(株価収益率)が妥当な水準まで回復すると見込まれる銘柄を買う手法をバリュー株投資と呼ぶ。バリュー株の代表格は商社や銀行、鉄鋼株などだ。

 グロース株とバリュー株のどちらが上がりやすいかは局面によっても異なる。実は足元の株価上昇を主導してきたのは、コロナ禍の影響が深刻化した昨年3月ごろに大きく売られていたバリュー株の買い戻しだ。

 ただし、市場のプロからは「1年単位ではバリュー株相場が続く可能性もあるが、10年単位ではグロース株が優位」(菊地氏)、「バリュー株は出遅れ感から買い戻されてきたが、長期的に続くものではない」(JPモルガン証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジスト)などと、長い目で見ればグロース株の方が有望との指摘がもっぱらだ。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストは、優良なグロース株こそが長期投資で最も有望な投資先とした上で、「むしろ金利上昇局面で強さを発揮しやすいバリュー株が上がる際、一時的に売られたグロース株を押し目買いするのが高パフォーマンスを発揮できるやり方だ」と指南する。

 三つ目が、グローバルに巻き起こる中長期的なトレンドに即していることだ。具体的には、デジタル化の進展や環境規制などが挙げられる。

 阪上氏は、「コロナショックはリーマンショックとは異なるものだ」と指摘。「リーマンショックでは米国の住宅ブームや新興国の急成長など、従来の成長の構図が壊れ、その前後でガラッと市場の勝ち組が入れ替わった。一方、コロナはあくまで一過性のショックであり、以前から指摘されてきた成長ストーリーを加速させる存在」だと話す。つまり、この分析に基づけば、コロナ前から成長を続けてきた銘柄は、今後も強さを発揮しやすいというわけだ。

 藤戸氏は、これらの観点を踏まえ、「半導体・電子部品・FA(ファクトリーオートメーション)・環境関連・DX」の5本柱が今後の株式市場をリードしていくとみる。

 足元の相場はバブルか否か――。急速な株高を受け、あちこちでこんな議論がかまびすしくなっている。その真偽の見極めは非常に難しいが、一つ言えそうなのは、たとえ相場全体が暴落に見舞われる局面があっても、先述の3条件に当てはまるような企業の本質的な強さは揺るぎ難いということ。株価は森羅万象を織り込んで形成されるが、最も重要な価値の源は、それぞれの企業が生み出す収益力の大きさに他ならないからだ。

 最後に次ページでは、日本株のトップストラテジスト3氏に聞いた、今後の株式市場における有望分野などをまとめた。成長企業への長期投資で果実を得るべく、こちらも参照してみてほしい。