ラジオ、談話室、オンライン居酒屋…
好みに合うかは人次第

写真:Clubhouse3

 そして、Clubhouseの使われ方に関してだが、これはユーザーによってさまざまに分かれている。ある人はラジオのようだといい、談話室のようだという人もいる。また、「オンライン居酒屋」のような捉え方もあり、音声のみで参加でき、無料で時間制限もないことから、Zoomなどより気軽に使える宅飲み用の雑談スペースとしても利用されている。

 今のところ、Clubhouse自体にはマネタイズの手段が用意されておらず、企業としてのビジネスモデルも明確ではない。

 しかし、音声によるプレゼンテーションの場としてビジネスアイデアを披露し賛同者を募る人もいれば、インフルエンサーを目指してともかくフォロワーを増やそうとする者もあって、テスラのイーロン・マスクや、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグなどの著名人が参加したルームに、瞬時に人が集まるような現象も起こっている。将来的には、イベント開催サービスなどで収益化を図っていく可能性もあるだろう。

 興味深いのは、アーカイブがなく、リアルタイムで参加するしかないことから、他のSNSと違って利用者に時差の影響が出やすい点だ。そのため、利用法にも国や地域ごとのニーズが反映されやすく、アメリカではビジネス界の成功者による音声版のウェビナーや業界人のネットワーキング、日本ではまったり系の雑談や情報提供が多いように感じる。

 また、ポッドキャストやオーディオブックでもそうだが、アメリカのような車社会では、移動中に利用しやすいことも普及の要因の一つといえるだろう。

 さらに、そのリアルタイム性や記録が残らないことから、中国では一時、民主化運動に関心を寄せる人たちが、すぐに規制がかかることを予期しつつも、情報交換ツールとして活発に利用していた。だが、案の定、すぐにブロックされ、現地のアプリストアからも削除されている。

 筆者自身は、いわゆる「ながら仕事」ができないため、ClubhouseはもちろんBGMも流すことなく執筆しているが、時々、話し手の立場でどこかのルームに呼ばれたり、まれに自分でも実験的なルームを開くことがある。一方では、ずっとClubhouseからの音声を流しているという人もいて、利用法や付き合い方は、本当に十人十色だ。

 タイトルに「百読は一聞にしかず」と書いたのも、そのような意味からで、Clubhouseというサービスの良しあしや、自分に合うかどうかは、実際に体験して判断することが一番といえる。

 幸い、招待制である以外は、聞くにも話すにもハードルの低いメディアなので、ITに疎い方でも導入しやすいところもある。新型コロナウイルスの感染拡大により、帰郷して親族と会うことや、入院した家族とのコミュニケーションもままならない今、Clubhouseの常時接続でお互いの日常を感じ合うような使い方も、今のご時世には合っているのかもしれない。