部下の興味関心や本音を
自分の“芸風”を駆使して聞き出す

 次に、部下のモチベーションを高めるために気をつけたいのが、部下への「仕事の依頼の仕方」です。

 部下を仕事にアサインする際、彼らの興味関心、価値観、キャリア観を見極めたうえで、仕事の意義や得られるものを、彼らのモチベーションと関連づけて依頼したほうが、やる気につながります。

 そんな部下の価値観を理解するために大事なのが、日頃の「対話」です。といっても、膝を突き合わせて本音を引き出そうとしても、なかなか出てきません。普段のコミュニケーションの中から、さりげなく本音をつかむことが重要になるでしょう。

 そんな部下から本音を引き出すために私がおすすめしたいのが、管理職自身が自分のコミュニケーションの「芸風」を見極めて、それを実践することです。

 マネジメントのうまい管理職は多くの場合、「さりげなく、部下の状況を聞く」ことにたけています。例えば「おい、あの件どうなってるんだ」と上司が威圧的に質問してしまうと、部下は「いえ、問題ありません」と良いことしか答えようとしません。人は、オフィシャルな場でプレッシャーをかけられると取り繕ってしまう習性があります。だから、責めないように「さりげなく」聞く。仕事の遅れを責めても仕方がないですからね。

 さりげなく聞くために、私の周りの管理職の人たちも、さまざまなテクニックを駆使しているようです。「何か困ってることない?」と直球で聞く人もいれば、「○○さんとの案件で参っちゃってさ。大変なんだよな。それでいうと、△△さんにお願いしている仕事も、結構手間が掛かってるんじゃないの?」などと自己開示してから相手に話させる人もいます。そういう、独自のコミュニケーションのコツを身に付けている人は、マネジメントがうまい傾向にあります。

 自分なりの芸風を使って、さりげなく本音を引き出す。引き出した本音を元に、人生観やキャリア観に沿った仕事をアサインし、感謝すべき点は感謝を伝える。そうすることで、部下のモチベーションを上げ、ひいては仕事の成果に結びつけていくのです。

マネジメント理論を学ぶことで
見えない“部下の心”を可視化する

 では、部下のモチベーションが上がっているかどうかを、適切に把握するにはどうしたらよいのでしょうか?

 モチベーションの源泉や価値観は、普段のコミュニケーションからだけではなかなか見えてきません。いつの間にか部下に嫌われてしまう上司は、見えないものに対し、「見ないフリをする」か「見たいように見る」ことで、自分は正しいと思い込む傾向にあります。しかし、それでは部下との溝は埋まりません。

 そこで活用したいのが、人が何によって動機づけられ、やる気が高まるのかを研究した「モチベーション理論」。見えないモチベーションを可視化する助けになります。