その後、有本さんの友人に男が映画館でのデートの誘いをかけたりと、有本さんの怒りの告発は続きます。「男の人なんて、本当に信用できませんね。どんな人でも。お互いに男の人にだけは気をつけようね。どんな人でも邪念があると考えてもいいようです」。
テロリストにされた疑いも
許せない国家犯罪
こんな警戒心を持ちながらも、1週間後には「ロンドンを離れコペンハーゲンに行く」といって、有本さんからの手紙はぷっつり途絶えたといいます。
取材班も、今までは西側の情報機関などによりキム・ユーチョルの情報を得ていただけに、こんなナマな形で有本さんとキム・ユーチョルの関係を知る資料が出てきたことには、本当に驚きました。
もちろん、記事に掲載すると関係各機関からそれぞれに、その手紙を見せてほしいというお願いがきたことはいうまでもありません。
たかだか週刊誌が、捜査権と調査予算をふんだんに持つ組織より先にニュースを得たことが、私にとってはとても嬉しいことでした。以降、3人の失踪留学生のうちの1人、石岡亨さんがバルセロナの動物園でよど号ハイジャック犯の妻たちと一緒に撮影された写真が発見され、北朝鮮に対する疑惑は明白なものとなりました。
その後、石岡さんのパスポートナンバーが北朝鮮の工作員や日本赤軍のメンバーの偽造パスポートに使われるなど、3人には「テロリストとなった」疑いさえ浮上しています。
もっとも、有本さんの手紙の大半は普通の女子大生の文章でした。
「私としてはPAULとは、ロンドンに私がいた間だけでも友達という感じでいつまでも付き合いたかったのに本当に残念です。もし、どこかで出会ったら気軽にHELLOと声を掛けたいなあ」
こんな文章を綴っていた女性が北朝鮮でどんな思いで暮らしているのか、本当に許せない国家的犯罪だと思います。