ただ商社というと、入社時に配属された部門の「背番号」がつけられ、退社するまで同じカンパニーで働く文化が根付いており、キャリアチェンジが難しい印象がある。「ラーメンからミサイルまで」という風に商社ビジネスの幅広さは比喩されるが、入社してラーメンならずっとラーメン、ミサイルならずっとミサイルに携わるのが一般的だ。

 同社では入社8年目までに海外を含む三つ以上の職務を経験するのが原則というものの、全く異なる分野で挑戦がしたいと考える人も中にはいるだろう。そこで同社では、「チャレンジ・キャリア制度」というカンパニーを越えた異動が実現できる制度を用意。社内イントラネットで告知される人材募集案件リストを見て異動希望を申請し、上司の了解を得た上でマッチングが成立すれば、異動が実現するという。

「年間で10名程度が利用しており、これが実現すれば背番号にとらわれない異動もできる」(米田氏)

総合商社では「適正感」トップ
伊藤忠の人事評価制度とは?

 評価の公平性は会社への信頼につながり、社員がやる気・働きがいを感じるためにも欠かせない要素だが、Openworkが社員クチコミを元にスコアリングした「人事評価の適正感」において、伊藤忠商事は総合商社の中でトップの結果だった。では、同社の人事評価制度はどのようなものなのか。

 同社では二つの評価制度を用意している。一つが多くの企業でも導入されている「目標管理制度(MBO)」で、経営計画に合わせて各社員に目標を分担し、この達成度合いによって業績を評価してボーナスなど変動給に反映されていく。

 もう一つが「人材アセスメント制度」という社員の能力や専門性、志向・適性を総合的にとらえて、人材育成や適材適所の異動に生かしていくものだ。これによって一人一人のキャリア形成につなげるのに加え、能力を総合的に評価した上で結果が固定給などにも反映されていくという。

「人材アセスメント制度の中では、キャリアビジョンシートを策定して、自分がどんな強み、弱みを持っているのかを振り返り、その上で上司と部下が面談し、評価をフィードバックする。公平・公正な評価と上司・部下の面談によるフィードバックが、納得感のある人事評価には重要だと考えている」(関野氏)

 今回は、三つに絞って、伊藤忠商事の働きがいのあるポイントを紹介した。さまざまな制度がそろっているとはいえ、関野氏も仕事は「厳しい」と語る。ただし、本来仕事はおしなべて厳しいものであり、楽をして成果が出るものはないだろう。そうした中でも安心感を持って、やりがいを感じられるかが、これからの時代で成果を出せる、働きがいのある企業に必要な条件ではないだろうか。