本書の要点
(1)人類はこれまでほとんどの期間、狩猟採集生活を送り、さまざまな危険に囲まれていた。そうした生活に合わせて進化した脳は、現代社会に適応できていない。
(2)スマホやSNSは脳の報酬系を刺激して依存させ、集中力を低下させる。ITの先駆者たちはそのデメリットを認識し、自分や子供のスマホ利用時間を制限していた。
(3)SNSはむしろ人を孤独にさせる。とくに子供のスマホ利用は、自制心の発達に悪影響をもたらす。
(4)睡眠時間を増やし、運動をして、スマホ利用時間を制限すべきだ。それが集中力を高め、心の不調を予防する方法である。
要約本文
◆人類の脳は現代社会に適応できない
◇脳がハッキングされている
スマホは、いまや私たちにとってごく当たり前の存在となった。しかしこうした文明は、人間の歴史からすると、ごく最近のものにすぎない。人間は、地球上に現れてから99.9%の時間を、狩猟と採集に費やしてきた。そのため私たちの脳は、今でも当時の生活様式に最適化されており、この1万年のあいだ変化していない。生物学的にいうと、脳はまだサバンナで暮らしている。脳は睡眠や運動、お互いへの強い欲求を備えており、こうした欲求を無視し続けると、精神状態が悪くなる。実際に先進諸国のほとんどで、睡眠障害の治療を受ける若者が爆発的に増えている。
だが時間のムダだとわかっていても、私たちはスマホを手放すことができず、無意識のうちにスマホを取り出し、集中力を低下させている。これは脳の報酬系がハッキングされているからだ。人間が新しいテクノロジーに適応するべきなのではなく、テクノロジーが私たちに順応すべきである。テクノロジーには一長一短があると理解し、金儲けのために人間の特質を利用するのではなく、人間に寄り添ってくれるような製品を求めていかなければならない。