ブルーオーシャン市場拡大の原点

「異常を検知し調査する」のは、ブルーオーシャン市場拡大の原点だ。

 自社製品の使用法を、ターゲットとは考えていなかった一般のお客様に教わった。

 私は考えた。

 果たして私たちがお客様に提供してきたものは作業服なのか。

 目の前の製品が「作業服である」という思い込みを捨て、ゼロベースで考えると、私の頭に「高機能ウェア」という言葉が浮かんだ。

 お客様はワークマンの製品を高機能だから買ってくれている。

「高機能ウェア」と定義し直すと、お客様は作業者だけではなく、アウトドア、スポーツ、ライダーや妊婦さんにまで広がる。高機能服を求めるお客様はいろいろな市場にいるかもしれない。

 2016年からインフルエンサー向けの製品発表会を開催して、お客様の声を取り入れた製品開発を進めた。

 これが次のステップとなる「開発段階からアンバサダーを巻き込み、店頭で紹介する」ことにつながっていく。

 これまで現場の作業者に向けた高機能PB製品を強化してきたが、その機能に注目した一般のお客様が「アウトドアで使える」「登山に使える」「ツーリングに使える」「妊婦さんでも安全」とブログやSNSなどで紹介してくれた。

 この時点でブレークスルーの一歩手前まできていた。

 一般のお客様への人気拡大を受け、2016年、PB製品群を用途別にブランド化することにした。

 アウトドアウェアの「フィールドコア」、スポーツウェアの「ファインドアウト」、レインウェアの「イージス」という3つのPBブランドが後追い的にできた。

ワークマンPB製品群のブランド化

「フィールドコア」は高機能だが、一般的なアウトドアブランド製品に比べ、価格は3分の1程度。アウトドアだけでなく普段着としても使われている。

「ファインドアウト」は、ジョギングやウォーキング、ジムでのトレーニングなどに使われている。

 たとえば、「クロスシールド」という体の動きに特化したブルゾンは、胴体部分が中綿で暖かく、腕回りの可動部分はニットでストレッチ性があり、冬のトレーニングに最適だ。

「イージス」は防水性が高く、雨に強いアイテムを揃えている。さらに秋冬アイテムは防寒性もプラスされる。ウィンタースポーツやマリンレジャーの際にも重宝できるようにした。

土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。