日本でもよく知られていると思うが、中国の一般家庭では、浴槽に漬かるよりもシャワーだけで済ませるスタイルが主流だ。介護施設でも、ほとんどがシャワーとなっている。ゆえに、日本製の福祉機器でも、介護施設向けに浴槽の販売は難しく、売れるのはせいぜいシャワーチェアだ(※筆者は以前、「日本式の訪問入浴サービスは、中国では成功しない」と主張していた時期がある。実際に当時、参入していた日本の介護事業者はことごとく失敗していた。まさしく、近年、中国の高齢化が急激に進み、介護サービスへ需要も一気に増え、多様化したのだろう)。

 そして、中国人は、親子であっても一緒に入浴して、体を洗う習慣がない。一方、日本では、親子や兄弟で一緒にお風呂に入ることが自然な習慣、いわゆる日本のお風呂文化である。

 ちなみに、中高年の日本人男性が小学生低学年の娘ならまだしも、中高生の娘とさえ、一緒にお風呂に入ることを「親子の仲が良い証」として自慢気に語ることがある。これは中国人にとっては、かなり衝撃的である。日本在住の筆者でさえも最初は面食らったほどだ。「大丈夫?精神がゆがんでない?」と疑問を抱く。

 また、これまで筆者は中国からの多くの訪日団をアテンドしてきたが、その際いつもこんな経験をしている。公務が終わって一泊温泉旅行の時に、事前に用意していた水着を持参してくる人が多い。それは年齢に関係なく、女性ほどその傾向が見られる。日本の温泉文化を頭では分かっていても、裸で入るのはやっぱり抵抗があるのだ。

 ここで、ちょっと話が脱線するが、日本では、一緒に温泉や銭湯に入ったことがあることは「裸の付き合い」と言い、人間関係の距離が一気に縮まり、仲良くなると考える。その一方、日本人は、中国の「ドアなしトイレ」については理解できず、不可解に思っている人が多い(今は地域により、どこでもあるというわけではない。また、都会ではほとんどドアがある)。それに対しては、中国人は「排せつは自然な行為であり、知らない人に裸を見せるほうが、よほど恥ずかしい行為である。日本人の感覚の方が不思議だ」と反論したくなる。まさに「文化の違い」である。

 このように、お風呂に入ることは中国人にとって、かなりデリケートなことなのだ。

日本からは
「社会のあり方」を学ぶべき

上海での訪問入浴の準備の様子
上海での訪問入浴の準備の様子

 まさしく、「日本式の訪問入浴サービス」が中国の高齢者らに、これほど好意的に受け入れられるというのは、多くの中国人にとって、とても意外で新鮮なことなのである。

 筆者の上海の知人であり、日本通でもある高齢者分野の専門家は、この現象について、次のように語った。

「日本のアニメや食べ物などの影響を受ける中国の若者は多い。それよりも、高齢者や障害者など、いわゆる弱者にどう接するべきかという『社会のあり方』をもっと学ぶべきだ。われわれが教わるべきことはたくさんある」