「丼」に見る「日本」のブランド力
マレーシアのレストランでは「丼(Don)」とついているメニューは必ず売れる。ステーキ丼しかり、親子丼しかり、唐揚げ丼しかり。日本のものを食べたい、日本のものは身体にいい、ということがマレーシア人のあいだでは常識になっているからだ。
「丼」に限らず、日本のブランド力はすごいなあ、と思う。家電の分野では最近、韓国のサムスンやLGの製品が増えているけれども、それでもまだまだ日本のメーカーは人気がある。また、ビジネスで海外に行く時に日本人と一緒にいて日本語を話していると、相手から簡単に信頼してもらえる。
僕の母国マレーシアに限って言えば、日本はいつの時代も自分たちの「味方」だった。マレーシアは1957年に独立するまで(国の成立は1963年)イギリスの植民地で、第二次世界大戦中の日本の「侵略」は、マレーシア人の目には「解放」と映っていたのだ。そして、その歴史感覚は現在まで続いている。首都クアラルンプールの街中で「日本は好きか?」と聞けば、小学生から居酒屋の主人までみんなが口をそろえて「イエス」と答える。あるアンケート調査では、その割合は70%にのぼるらしい。
日本にいると、「日本は世界で落ちぶれてしまった」とか、「日本のブランド力は地に落ちてしまった」とか、ネガティブなことがよく言われる。けれど、僕からすれば、その見方は現実と全然あっていない。
僕がいろいろな国の人を通して肌で感じるのは、日本や日本人への「信頼」や「あこがれ」は、今も昔もまったく弱まっていない。先に書いたマレーシアの話は、他のアジアの国々や欧米にもあてはまる。