数字を信奉する上司は
なぜ部下のモチベーションを下げさせるのか

 上司にとっての重要な使命は、任された部署の業績を上げることといえる。そのためには、部下たちの気持ちをひとつにまとめ、モチベーションの高い集団にしていく必要がある。

 だが、数値目標や数値による評価だけを重視する上司には、人間味が薄い人物もみられ、部下のモチベーションを下げさせる傾向がある。人間というのは気持ちで動く面が強く、気持ちの交流が乏しいと、モチベーションも上がりにくいということだ。

 では、なぜ数字を過度に信奉すると、人間味が乏しくなる傾向があるのか。それは、人間心理に対する感受性の乏しさが数字への信奉につながっている面があるからだ。そもそも人間に対する興味が乏しいのである。興味がなければ感受性も磨かれない。

 感受性が乏しければ、それぞれの部下の働きぶりを見て、取引先との信頼関係を築いているかどうか、客対応がきちんとできているかどうか、誠実な仕事をしているかどうかなどといったことを読み取る能力が劣る。

 そうした感受性の鈍さは、人事評価のみならず、その人自身の仕事の質の低さにもつながり、部下からの信頼を得にくくさせている。

 そして、今の動きからこの先を予測する直観力や想像力が乏しい。そういう人物にかぎって、「数字を示せ」「データでものを言え」などと言う。

 数字なら読めるけど、肌で感じたり、想像力を働かせたりできない。まだデータになっていない世の中の現象から変化を敏感に感じ取るということができないのだ。このような上司の下では、なかなかモチベーションも上がらない。

 自分自身もいろんな意味で感受性が鈍いかもしれないと感じる場合は、そこを補うべく、部下の気持ち面や働きぶりに対して、意識して関心を持つように努めたい。また、世の中のさまざまな現象の数字にならない部分に想像力を働かせる訓練を、意識して行うことが大切となる。

 組織としては、仕事の質的側面にも目を向け、数字を過度に信奉しすぎないように注意する必要があるだろう。それと同時に、部下の人間心理に対する感受性に欠ける上司が人事評価面で暴走しないようなチェック体制を設けることも必要である。