今も終わらない原発事故を
忘れずにいられるのか

 東日本大震災から9年目の2020年、世界をコロナ禍が襲った。「避難の協同センター」の活動も、さまざまな制約を受けている。松本さんは、「新型コロナがなければできることが、なかなか進められなくてもどかしいです」という。

 自主避難した母子たちの中には、福島県とのつながりが絶えてしまった人々もいる。福島県に残った夫と、結局は離婚に至った人々もいる。経済的支援が消えていく中で、子どもたちが高校生や大学生になり、多額の教育費が必要な時期になると、母親の就労ではどうにもならない場面もある。自主避難者の生活困窮は、年々厳しくなる傾向にあった。そこに、2020年以来のコロナ禍が重なり、現在に至っている。

 もともと大変だった人々ほど、さらに大変な状況になっていくのだろうか。

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「その通りです。10年が経ち、自主避難者は少しずつ理解されるようになってきたと感じていますが、まだまだではないでしょうか。『震災後、義援金などの対象になったかどうか』という分断や、『国による支援の対象かどうか』という分断があります。自主避難した人としなかった人の意見の相違もあります」(松本さん)

 そもそもの始まりは、福島第一原発事故だった。2011年3月11日の16時36分に発出された「原子力緊急事態宣言」は、今も解除されていない。

「あの原子力緊急事態宣言がまだ解除されていないことは、充分に理解されているでしょうか。今、廃炉が進んでいますけれども、30年後や40年後、まだ終わっていないかもしれません」(松本さん)

 今年2月13日夜、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震があった。この地震は、東日本大震災本震の余震と見られている。地震も大津波も、自主避難者たちの苦難も、終わっていない。

(フリーランス・ライター みわよしこ)