総額表示、今やることだったのか?
総額表示は、確かに消費者にとって利便性はある。現在の税抜き価格表示はあくまで特例措置で、その期間が終わるんだから速やかに従うべき、というのもルール通りだ。消費者だって8%あるいは10%の消費税を今も負担しているのだから、一見すると問題はない。
しかし、今やるべきことなのかは疑問だ。
これまでと払う金額は変わりませんと言われても、やはり10%を含んだ金額を見ると「高い」と感じる消費者は多いだろう。昨日までより明らかに金額が上がった値札を見て消費マインドが上がるはずはなく、買い控えにつながりかねない。なるべく安い店を、なるべく安いメニューを選ぶという消費行動になっていくのは当然の流れだろう。ますますデフレが加速しそうではないか。
内閣府の消費動向調査によると、「2月の消費者マインドの基調判断は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる」という。緊急事態宣言の解除以降は消費熱は上向きになるに違いない。1円でも多く売り上げて、これまでの分を取り返そうと事業者側が意気込むタイミングで、価格が上がったように感じさせる総額表示への切り替えは得策なのだろうか。その「値上げ感」を払しょくするために、ユニクロのように実質値下げに踏み切らざるを得ない店だってあるだろう。消費者がこれまでと払うお金が変わらないのに、買い控えにつながってしまうとすれば、誰のトクにもならないように思える。
「もともと決まってたんだから仕方がない」という声もあるだろう。しかし、住宅ローン減税の拡充策の方は、決まっていた入居期限を2年も延長するらしい。コロナの経済対策という旗印があると、決まっていた期限も延ばせるのだ。お金を使うのは高額なマイホームを買うお金持ち層だけでなく、庶民たちも同じだ。気持ち良く使わせてくれた方が、日本の景気は前向きに上がっていくと思うが、違うだろうか。