佐原 「70歳ねぇ……、まぁそれでも会社に残れるならありがたいと思わないといけないかなぁ」

カタリーナ 「会社に残れるとは限らないわよ。65歳の前と後では大きな違いがあるのを知っておく必要があるわ」

佐原 「えっ?」

カタリーナ 「今年4月1日から、65歳までの雇用確保措置に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保するために次のいずれかの措置を講じる努力義務が企業に課されるの。わかりやすくいうと、こんな感じね。定年廃止以外は、どれも70歳まで継続的に働ける制度の導入がポイントよ」

 そういってカタリーナは、画面上のホワイトボートに走り書きをした。

佐原 「こんなにいろいろと……。うちの会社はどうなるのか、まだ正式には聞いていません」

カタリーナ 「それだと急に定年を10歳も引き上げたり、一気に廃止したりするのはちょっと考えにくいわね。大手であれば、グループ会社への再就職支援に乗り出す可能性は高いでしょうけれど。たとえば、NECは2021年度から役職定年を廃止して、シニア人材をNECグループ内外の職場に派遣やあっせんする取り組みを始めているわ」

佐原 「なるほど」

カタリーナ 「雇用されない働き方の選択肢が入ってくる点は、65歳までと大きく違うわね。とはいっても、自社や自社以外も含めて、70歳までの継続雇用制度を設ける会社は多いと思うわ。ただこの場合、注意しておきたいことがあるの」

佐原 「なんですか?」

カタリーナ 「継続雇用の対象者を限定する基準を設けることができるってこと。つまり、今のところは、希望すれば絶対に70歳まで働けるっていうわけじゃないってことね」

佐原 「というと?」

カタリーナ 「70歳までの就業確保措置は、現時点ではあくまでも努力義務ということ。けれど、あなたが65歳になる頃には、もう義務化されているかも。そうなったら、希望すれば誰でも70歳まで働けるようになるかもしれないわ」