引退の時期は自分で決める時代に
年金とキャリアプラン、両輪で考える

カタリーナ

佐原 「60歳で定年退職後は、悠々自適とまではいかなくとも年金で何とか暮らしていけるかと思っていましたよ。まさか70歳まで働く時代になるとは、思いもしませんでしたね」

カタリーナ 「これまでは定年がキャリアのゴールのようなところがあったけれど、これからはリタイアする時期は自分で決める時代になるわね。そもそも、定年まで今の会社で耐え抜こうだなんて発想は捨てた方がいいんじゃない?」

佐原 「手厳しいなぁ。でも、まぁその通りかもしれません。このまま無難にやり過ごせたらって思う気持ちもありますが、それにしてはまだ先が長い。環境もどんどん変わっていくし」

カタリーナ 「そうそう、不安になっている場合じゃないわ。会社に預けてきたキャリアの主導権を取り戻して、あなた自身が今後どうしたいのか、まずしっかり考えることが大切だと思うわ」

佐原 「そうだなぁ、ただお金のために働いているわけじゃないし……。とはいっても、老後の資金も心配だ」

カタリーナ 「老後といえば年金ね。あなた、自分がどのくらい将来年金をもらえるか、わかってる?それに退職金も」

佐原 「えっ? いやぁ、そう言われると恥ずかしながら……」

カタリーナ 「毎年、誕生月に『ねんきん定期便』が届いているでしょ? 50歳以上になると、60歳まで同じ条件で加入し続けたと仮定して計算した見込額が表示されるようになるから、確認してみて。退職金も就業規則を見れば、自分で大体の額は試算できるはずよ」

佐原 「はい、確認してみます」

カタリーナ 「年金は原則65歳からもらえるけれど、今は70歳まで遅らせることができる。22年4月から年金制度が改正されて、75歳まで遅らせることもできるようになるわ。受け取り開始を66歳以降に遅らせると、年金額は1カ月遅らせるごとに月0.7%ずつ増えるから、70歳からもらい始めると、65歳からと比べて毎月の年金額は42%増え、75歳からもらい始めると84%も増えるってわけ」

佐原 「そりゃ、すごいな」

カタリーナ 「逆に年金の開始時期は60歳まで繰り上げることもできるけれど、月0.5%ずつ減額されてしまうの。改正後の減額率は0.4%ね。だから65歳までは継続した収入源を確保することを頭に入れておいて。年金をベースとしたマネープランとキャリアプラン、両輪で考えることが大切ね」

佐原 「う~ん、これはボヤボヤしていられないな」

<カタリーナ先生のワンポイント・アドバイス>

●65歳までの雇用確保措置(〈1〉定年を65歳まで引き上げる、〈2〉定年制の廃止、〈3〉65歳までの継続雇用制度の導入)義務に加え、高年齢者雇用安定法の改正により、2021年4月1日から65歳~70歳までの就業機会を確保するため、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が新設された。努力義務のため、下記(1)(2)を除き、対象者を限定する基準を設けることが可能。
(1)70歳までの定年引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

なお、上記(4)(5)を創業支援等措置といい、これらを導入するには創業支援等措置の実施に関する計画を作成した上で、過半数労働組合等の同意を得る必要がある。

●高年齢者就業確保措置のうち、いずれの措置を講ずるかについては、労使間で十分に協議を行い、高年齢者のニーズに応じた措置を講ずることが望ましいとされている。

●公的年金の支給開始年齢は原則65歳だが、希望により60歳~70歳の間で開始時期を決めることができる。2022年4月1日からは60歳~75歳の間に拡大され選択できるようになる。改正後、繰り上げ受給の減額率は0.4%に引き下げられ(最大24%減)、繰り下げ受給の増額率は0.7%のまま変わらない(最大84%)。この年金額は生涯受給できる。

※本稿は一般企業に見られる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応してください。

(社会保険労務士 佐佐木由美子)