細菌叢で心臓を守る、植物性と多様性がポイント
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 近年、「お腹の健康」の域を超え、自己免疫疾患から心疾患、はては認知症など重大な病気にも関係していることが知られるようになった「腸内細菌叢」。

 たとえば、卵やエビ、赤身肉に含まれるL-カルニチンが腸内細菌に代謝されて生じる「TMAO」という物質は、動脈硬化を悪化させ、脳・心疾患リスクになることがわかっている。

 この代謝過程を標的にした抗動脈硬化薬が開発中だが、実用化はまだまだ先の話。腸内細菌叢にアプローチするには、やはり食生活がポイントのようだ。

 マサチューセッツ総合病院の研究者グループは、看護師を対象とした疫学研究に参加している女性被験者(30~55歳)を対象に、1989~90年と2000~02年の2回、TMAOの血中濃度を測定。10年間の血中濃度の変化を算出し、16年までに冠動脈疾患(CHD)を発症した380人について解析を行った。

 参加者は2年ごとに生活習慣や病歴などを報告。食生活は、健康的な食事か否かを判定する2つのスコアを用いて評価している。

 その結果、血中TMAO濃度の変化が最も大きい人は、常に安定していた人よりもCHD発症リスクが1.67倍高く、初回採血時にすでに高TMAO値だったケースでは1.79倍に増加。血中TMAO濃度がじわじわ上昇するに連れて、CHD発症リスクも直線的に上昇することが示された。

 食生活の影響をみると、肉食中心の不健康な食生活で血中TMAO濃度が上昇し、CHD発症リスクが増強される一方、野菜中心の健康的な食生活では発症リスクが小さくなることがわかった。研究者は「腸内細菌叢が心疾患予防のターゲットになる」としている。

 さて、健康的な腸内細菌叢を育てるキーワードは「植物性」と「多様性」だ。昨今は「菌活」と称しサプリメントに頼る人もいるが、単調な補充だけでは逆に菌叢が偏り、ぜい弱になりかねない。

 むしろ、腸内細菌叢の餌になる食物繊維が豊富な野菜や豆類、全粒穀物を意識して摂り、菌叢の多様性を保つこと。21世紀は腸内細菌叢もダイバーシティが鍵である。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)