野村が2200億円の損失も、「アルケゴスショック」が投資家に迫る3つの論点Photo by Ryosuke Shimizu

米投資会社の運用破綻に端を発した「アルケゴスショック」――。これに関連して、野村ホールディングス(HD)が約2200億円の損失を被る可能性を発表するなど、金融市場に衝撃を与えた。この一件を受けて投資家が考えるべき論点は大きく三つある。(1)危機は連鎖するか、(2)いかにも『バブル的』な資金の流れに対する視点、(3)野村HDの株価評価に対する「考え方」だ。それぞれ解説していこう。(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

アルケゴスショックの論点(1)
危機は連鎖するか?

 先週初めの3月29日(月)、野村ホールディングス(野村HD)は米国子会社の取引に伴って20億ドル(約2200億円)程度の損失が発生する可能性を公表した。同日、野村HDの株価終値は前週末比117円70銭安の603円に下落した。

 この損失は、元ヘッジファンドマネージャーが運営するアルゲゴス・キャピタル・マネジメントというファミリーオフィス(個人資産運用会社)の運用破綻によるもので、同社の取引に関連しては、スイス金融大手のクレディ・スイスも巨額の損失の可能性を発表した。

 また、わが国では三菱UFJ証券HDが約3億ドル、みずほフィナンシャルグループが1億ドル規模の損失の可能性を公表した。不名誉な事態だが、野村HDは損失額が示唆する取引規模の大きさにおいて、わが国証券業界最大手の面目を保ったといえようか。

 ファミリーオフィスはヘッジファンドよりもさらに情報の秘匿性が高いこともあり、損失経緯の詳細は分からない。ただ、アルケゴスは高いレバレッジを掛けた株式取引を行っていて、手法としてトータル・リターン・スワップ(TRS)を用いていたとみられる。TRSとは、手数料と引き換えに、株式などの原資産を直接持たずとも、そのリターンに基づく収入を得られる手法のことだ。

 そして、取引で含み損が発生して追加担保を差し入れる必要が生じたときにこれができなかった。その結果、担保の処分とポジションの解消が行われて、保有資産が投げ売りされる形となって破綻したようだ。