「大学中退=終わり」ではない
コロナ中退者は早い段階で内定も

 Aさんのように、新型コロナを起因とする金銭的な理由によって大学を中退し、就職活動を始める人は少なくない。Aさんの就職活動も支援した「就職Shopしんじゅく」のキャリアコーディネーターである佐川亜矢子さんは、「もともと支援する方の中に大学中退者は多かったが、昨年末ごろからコロナをきっかけにした金銭的な理由による中退者の方が来るようになった」と語る。

「母子家庭で、学費や生活費を自分のアルバイト代で工面していた方は、飲食業で働いていたためにコロナの影響が直撃し、中退を選んだ。また中退ではないが、大学院進学を予定していた方は、親御さんの経済状況が悪化したことで進学を断念。そのため、急きょ、就職活動を行うことになった。こうした金銭を理由にした中退や進学の断念というのは、例年は見かけなかったケースだ」(佐川さん)

 同サービスを利用する中退者などの多くは、「不安が大きい」「自信がない」といった特徴があるという。

「中退すれば、“大卒”からはこぼれ落ちてしまう。大卒が条件になっている求人も多いことから、他社の就職支援サービスでは紹介を断られたりして、もう就職できないと思い込んでいる方もいる」(佐川さん)

 しかし、実際にはAさんをはじめとして就職先を決められる人がいるように、「決して終わりではない」とリクルートの就職に関する調査・研究機関である就職みらい研究所の増本全所長は語る。

「経営者の中には『新卒』ではなく、『若者』というくくりで人材を見ている人も数多くいる。自社で活躍しているのが、大卒社員だけではない会社であれば、実際のイメージもつかみやすく、そういう経営者からすれば『大卒でもいい』という感覚だ」(増本所長)

 しかも新型コロナによる経済的事情をきっかけに中退をした人は、比較的早く就職先が決まりやすい傾向があるという。

「家族が経済的に厳しい状況に置かれたことから『自分が何とかしなければ』『家族のために働かなければ』という意識が強く、働く目的がはっきりしている。そうした覚悟の違いが企業にも好印象となり、多くは活動を始めて1カ月~1カ月半ほどで就職先が決まっている」(佐川さん)