昔と今では「働く人の状況」が
劇的に変わっている!
『他者と働く』でも少し書いたのですが、1970年代のホンダは社員が約3万人でしたが、現在は20万人を超えています。
女性の大学進学率も90年代までは今とは比べものにならないほど低い水準でしたが、その後、急激に上がってきます。
竹内弘高・野中郁次郎両氏が1986年に「新たな新製品開発競争」という論文を書きました。これは、スクラム開発のコンセプトが出された『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載された論文です。
その中でも、優れた新製品開発には、当時は60~100時間の残業が必要であるとも書かれています。
これが何を意味しているかと言えば、日本的経営がもてはやされた当時は「大卒男性が、長時間残業しながら働くモデル」で機能していたということではないでしょうか。
言い換えれば、同質性を持った人たちが集まる組織だったわけです。
当然ながら、同じことを今、この時代でやるわけにはいきません。
90年代以降、女性もどんどん正社員として働くようになりましたし、グローバル化も進んで、組織の規模も大きくなりました。長時間労働の問題もあるので、以前のように残業するわけにもいきません。
従来は同質性の組織でしたが、現在は異質性、多様性が高まり、組織の規模も大きくなりました。
端的に言うと「お互いどんな人なのか」わからないまま、仕事をしなければならないのです。
これだけでもかなりの変化ですが、さらにIT化やリモート化が進み、以前だったら隣の人が電話をしていれば「ああ、お客さんに怒られてるな」とわかったのも、今ではまったくわかりません。
同僚も、上司も、部下も、どんな仕事を、どんな思いでやっているのか、お互いにわからないわけです。
それでいて、昔みたいに飲み会で交流するわけにもいかず、子育てや介護などで早めに家に帰らなければならない人もたくさんいます。
こうしたさまざまな環境変化は、ずっと起きてきました。
しかし、その中で、徐々にすれ違いが生じることに手立てがなかなか講じられてこなかったように思います。
──こうして挙げてみると、
本当にさまざまな変化が組織内で起こっているのですね。
宇田川:これだけの変化があれば、従来のマネジメントが機能しなくなり「対話が必要だ」「もっとコミュニケーションを取らないとまずい」となるのは実に当然でしょう。